2025(令和7)年6月のWeb版貴重書展示「ハルマ辞書」
AN79
『蘭仏辞典』
現代の日本人で、オランダに強い親近感をもっているという人はそれほど多くないのではないかと思われますが、200年余りにわたる鎖国時代、日本が交流していたヨーロッパの国はオランダだけでした。では、イギリスやポルトガルなどではなく、なぜオランダだったのでしょうか?
17世紀初頭、イギリスは日本との貿易から撤退し、スペインやポルトガルはその宗教色の強さから幕府に拒絶されていました。そのような状況にあって、宗教色が薄く、貿易活動にも積極的だったオランダは、幕府が交流を行う国として非常に都合が良かったのです。
鎖国当初は、中国語を介してオランダ語の通訳や翻訳を行っていましたが、やがて、長崎奉行所の地役人として、オランダ通詞と呼ばれる世襲の通訳が生まれました。
18世紀に入り、8代将軍徳川吉宗による享保の改革の一環で洋学が奨励されると、オランダ(語)を介した洋学である蘭学の需要が一気に高まり、『ハルマ和解』などのオランダ語辞書の編纂が行われるようになりました。
展示期間・場所
期間 5月31日(土曜日)~6月29日(日曜日)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室に入ってすぐの貴重書展示コーナー
展示資料一覧
画像をクリックすると、当館デジタルライブラリーの該当資料が表示されます。
書名等 | 画像 | 略説 |
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AN79 |
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ユトレヒト(オランダ)の出版業者フランソワ・ハルマが編集したオランダ語とフランス語の対訳辞書。江戸時代で最も古くから知られた外国語辞書で、『ハルマ和解(江戸ハルマ)』や『ヅーフハルマ(長崎ハルマ)』の原本です。 |
K070/2 |
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日本初の蘭和辞典で、フランソワ・ハルマ(1653~1722)の『蘭仏辞典』(Woordenboek der Nederduitsche en Fransche taalen)を原本とし、約6万語を収録しています。ハルマの『蘭仏辞典』はオランダ語の単語をフランス語とオランダ語で解説していたため、そこからフランス語部分を除き、オランダ語の解説部を日本語に訳す形で作成されました。 デジタルライブラリーへのリンク ハルマ和解(左の画像は3コマ目) カラー写真(冒頭21コマのみ) |
K070/3 |
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オランダの商館長ヘンドリック・ヅーフ(1777~1835)が長崎通詞と協力して編集した蘭和辞典で、フランソワ・ハルマの蘭仏辞典(第2版1729年)を原本としています。辞典が完成した当時、浄書されたのは33部、そのうち1部は幕府に、2部は長崎奉行所と江戸天文方にそれぞれ分置されました。また、幾つかの藩に融通され、その後、写本も作られました。 |