パンくずリスト:このページは ホーム »の下の デジタルライブラリー »の下の しずおかの貴重書常設展示 »の下の 2025(令和7)年11月のWeb版貴重書展示「蔦屋の浮世絵」 です

2025(令和7)年11月のWeb版貴重書展示「蔦屋の浮世絵」

大井川往来之図

K915-108-021-060
『大井川往来之図

今年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」は、江戸時代を代表する版元「蔦重」こと蔦屋重三郎(1750~97)が主人公の物語です。
蔦屋重三郎は、太田南畝や山東京伝、恋川春町、曲亭馬琴らと組んで洒落本や黄表紙などを出版したほか、喜多川歌麿(うたまろ)や葛飾北斎、東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)らの浮世絵版画の出版も行うなど、江戸の出版文化を牽引する役割を果たした人物です。
その商標は富士山形に蔦の葉で、今回展示している喜多川月麿(つきまろ)や東洲斎写楽(復刻版)の浮世絵の版元印として確認できます。もっとも、月麿に改名したのは文化元(1804)年以降とされていることから、この月麿の浮世絵は、ドラマの主人公の初代蔦重による出版ではないと思われます。
ちなみに、当館所蔵の浮世絵には、蔦重の商標によく似た版元印のものがあります。富士山形に蔦の葉のため一見すると同じ図柄に見えますが、蔦の葉の上に「・」があるのが特徴で、蔦屋は蔦屋でも蔦屋重三郎の別家とも言われる「蔦吉」こと蔦屋吉蔵(生没年不詳)の版元印です。展示している浮世絵で版元印の違いを確認してみてください。

展示期間・場所

期間 11月1日(土曜日)~11月27日(木曜日)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室に入ってすぐの貴重書展示コーナー

展示資料一覧

画像をクリックすると、当館デジタルライブラリー、拡大画像または国立文化財機構所蔵品統合検索システム(ColBase)(https://colbase.nich.go.jp/)の該当資料が表示されます。

書名等 画像 略説

K915-108-003-015
上村翁旧蔵浮世絵集『全盛花姿画 巻六 大文字屋内 一トもと』

喜多川月麿
大判
出版年不明
版元:蔦屋重三郎

全盛花姿画 巻六 大文字屋内 一トもと

大河ドラマ『べらぼう』に登場する蔦屋重三郎が版元を務めた作品です。ただし、浮世絵の制作年代から二代目蔦重の作品と思われます。絵師の喜多川月麿(生没年不詳)は、喜多川歌麿(?~1806)の門人で、師と同じく多くの美人画を手がけました。
モデルの一トもと(ひともと)は、ドラマで伊藤敦史さん演じる大文字屋市兵衛(いちべえ)が興した江戸・吉原の妓楼「大文字屋」お抱えの遊女です。華やかな髪飾りや、名の横に「せんかく・ばんき」と禿(かむろ)(遊女見習い)の名があることから、地位の高さがうかがえます。左手に香炉を持ち、香を楽しんでいる様子が描かれています。遊女を題材にした美人画では、教養の高さを示すために、文筆や楽器演奏、囲碁を嗜む姿などがしばしば描かれました。

K915-108-021-060
上村翁旧蔵浮世絵集『大井川往来之図』

歌川国清(くにきよ)
大判錦絵(3枚続)
安政4(1857)年10月
版元:蔦屋吉蔵

大井川往来之図01

街道随一の難所として知られる大井川の「連台越し」の情景を描いた作品です。現実には困難を極めた大井川の川越しも、浮世絵の中では美しく、風情あるものとして表現されています。当時、「入り鉄砲に出女」といわれ、女性の旅人は厳しく取り締まられていましたが、浮世絵では旅人に見立てられた女性たちが、優雅かつ華やかに描かれています。肩車や連台に乗って川を渡る艶やかな女性たちの姿は、旅に憧れる江戸庶民にとって新鮮で魅力的に映り、人気を博したものと考えられます。このほかにも、蔦屋吉蔵は歌川広重の『東海道五十三次之内』『五十三次名所圖會』といった旅や名所を題材にした作品を出版しています。

K915-108-055-012
上村翁旧蔵浮世絵集『篠塚浦右衛門の都座口上図(しのづかうらえもんのみやこざこうじょうず)(復刻版)』

東洲斎写楽
大判
出版年不明
版元:蔦屋重三郎

篠塚浦右衛門の都座口上図(復刻版)

都座の口上役を勤めた篠塚浦右衛門が手にする紙面には「口上 自是二番目新板似顔奉入御覧候」と書かれています。これは、写楽の役者絵の様式が今までの半身像の大判から主に全身像の細版に変わることを、都座の口上の形を借りて発表したものとされています。
写楽の役者絵は、江戸三座(都座・桐座・河原崎座)の芝居興行に合わせて形式と表現を変えながら4期に分けて出版されており、この口上図は第2期の宣伝にあたるとされています。その背景には版元の蔦屋重三郎の計画的な企画展開と意気込みがあり、写楽の絵が蔦屋重三郎と歌舞伎関係者による共同企画であったことがうかがえます。

出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム(ColBase)へのリンク

貴重書展示一覧に戻る