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2024(令和6)年6月のWeb版貴重書展示「明治の静岡の教科書」

日本地誌略

明治初期、日本は欧米列強による植民地化の危機にさらされており、早急な近代化と富国強兵の必要に迫られていました。
「教育」こそがその最重要施策であると考えた明治政府は、学制取調掛(とりしらべがかり)を任命して学制の起草に着手。翌年の明治5(1872)年には学制を頒布し、近代的な学校制度をスタートさせました。
日本の近代公教育制度の創設は、当時の欧米列強と比べても異例の速さで、学制の起草に当たって模範とした国の一つであるフランスより9年も早いスタートでした。
学問の分野については、理系科目など実利に直結する実学が重視され、近世以来の儒教教育は一時衰退しました。
今回展示している地理と国語の教科書は、静岡で編集刊行されたものや文部省が編集した版を静岡で重刻したもので、明治時代に静岡の子どもたちが使っていた教科書です。

展示期間・場所

期間 6月1日(土曜日)~6月27日(木曜日)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室に入ってすぐの貴重書展示コーナー

展示資料一覧

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書名等 画像 略説

S088-353
『日本地誌略』

日本地誌略

本書は文部省が学制発布にあたり刊行した最初の小学校の地理教科書のうちの一つです。初めに「我日本国ハ亜細亜(あじあ)洲ノ東部ニ位(くらい)セル帝国ニシテ、中央ノ大地ヲ本州トシ、其餘(そのよ)四大島ト数千ノ島嶼(とうしょ)ヲ合セテ一国ノ形勢ヲナス」で始まる総論があり、日本の位置、面積・人口などを掲げ、全国を畿内と8道84国に大別しその国名を記しています。
「巻一」は畿内5国と東海道15国に関して書かれており、薩峠(さったとうげ)から見た駿河湾と富士山の挿絵も掲載されています。
全4巻の構成で、日本各地の地理や産物等を簡潔に説明しています。統一した体系立てや記述方法など革新的な要素もありましたが、きちんとした教材観がなく、また内容も無味乾燥と批判されるなど未だ課題を抱えていました。

国立国会図書館デジタルコレクションで全文を読むことができます(日本地誌略 外部サイトリンク)

K179-69
『小学読本』

小学読本

本書は、日本初の国語教科書として、文部省が刊行したものの一つです。
『小学読本』は、明治6(1873)年に田中義廉(よしかど)が編集して刊行されたもの(田中本)と、榊原芳野らが編集して刊行されたもの(榊原本)があります。今回展示されているのは、榊原本を明治7(1874)年に静岡県が重刻したものです。
田中本は、内容の大半がアメリカの教科書『ウィルソン・リーダー』の翻訳で、挿絵も異国的であったのに対し、榊原本は、前半でいろは順・五十音順に頭文字となる言葉を並べ、単語を学習し、後半で歴史上の逸話などを参考にした教訓的物語を読むという、古典的性格が強いものでした。
そのため、田中本と榊原本を組み合わせて使用することも少なくありませんでした。

S290-243
『静岡県誌』

静岡県誌

明治期の地理教科書は当初、文明開化の観点から世界地理の記述に力が入れられました。しかし明治10年代になると、地理学習の入口として身近な地域を学ぶ必要が唱えられ、地方誌教育が推進されるようになります。本書はこうした方針の下で作成された一連の「府県地理書」の一つです。
本書の記述内容は国別に国の境界、位置、郡名、山と川、他の自然条件(海湾、岬、島、湖等)、主要な街市、産物名をあげていく当時の地理教科書の一般的なスタイルをとっています。一方で、その土地の沿革や来歴などを有機的に加えるなど、他の府県教科書にはない特色も見られます。編者の平山陳平は県下を代表するジャーナリストでした。
明治30年代になると、国の方針を背景に、地理教科書においては国レベルの記述が主流となり、府県地理書は姿を消していきます。

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