2024(令和6)年11月のWeb版貴重書展示「江戸の医学書」
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『全体新論』
新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックにより、医療従事者をはじめ、さまざまな立場の人びとがその対策に追われたのは、まだ記憶に新しいところです。
江戸時代においても、天然痘、麻疹、水痘が「お役三病」とよばれたり、幕末にはコレラが流行したりするなど、感染症は恐れられていました。では、当時の医療の水準はどのようなものだったのでしょうか。
江戸時代も後期になると、鎖国下でオランダや中国を通して最新医学の知識を学んでいたため、医療の水準は想像以上に高度だったようです。世界で初めて全身麻酔を用いた手術に成功した華岡青洲や、『解体新書』を著した杉田玄白らも蘭方(西洋医学)を学んでいました。
日本の西洋医学の発展に影響を与えた人物に長崎出島のオランダ商館医シーボルトがいます。彼が開いた鳴滝塾には全国から俊英が集まり、その中には、のちに蘭方医として初めて幕府奥医師となった伊東玄朴などがいました。
展示期間・場所
期間 11月2日(土曜日)~11月28日(木曜日)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室に入ってすぐの貴重書展示コーナー
展示資料一覧
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書名等 | 画像 | 略説 |
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492/ヒシ |
本書は、ドイツ人の毘斯骨夫(びしょっぷ)の著書をオランダ人漢越而実幾(はんえるじっき)が蘭訳したものを、更に伊東玄朴(いとうげんぼく)が和訳したものです。天保6年に初篇の3巻を刊行した後、安政5(1858)年まで23年の歳月をかけ全8篇24巻刊行しました。当館では初篇から7篇までの21巻を所蔵しています。 国書データベースで全文を読むことができます。(『醫療正始』(東京大学総合図書館所蔵)外部サイトリンク) |
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490.9/24 |
本書は、駿府の医師・花野井有年(はなのいありとし)(1799~1865)が53歳の時に著したもので、上下2巻よりなっています。有年は、安西五丁目で生まれましたが、家業の煙草売りになじめず、20代の頃、江戸や上方で蘭方を学びました。しかし、30代になって、妻子を失い、貧乏にあえぎ、天保の飢饉で死ぬほどの苦労を味わうと、蘭方や漢方の無益さを悟り、和方家に転向します。 国書データベースで全文を読むことができます。(国書データベース『醫方正傳』(当館所蔵)外部サイトリンク) |
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『全体新論』は、中国へ派遣された英国宣教医師ベンジャミン・ホブソン(1816~1873、中国名:合信)が中国人医師:陳修園(ちんしゅうえん)の協力を得て著した医学書です。ホブソンは、宣教医師として活躍する傍ら、中国語による医学書、科学書、キリスト教布教書などを著しました。本書は、19世紀以降、中国で初めて翻訳された近代西洋医学書であり、人体の構造について多くの図をまじえて解剖学的に記述されています。 国書データベースで全文を読むことができます。(『全體新論』(国文学研究資料館所蔵)外部サイトリンク) |