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2023(令和5)年6月のWeb版貴重書展示「江戸の数学」

新編塵劫記

419.1/ヨシ
『新編塵劫記』

江戸の数学

Web版 貴重書展示~

江戸時代、鎖国下の日本は、科学や数学の面で遅れていたようなイメージがあるかもしれません。しかし、江戸時代に発達した数学「和算」は、実は世界でも優れた水準のものでした。
冲方丁の小説『天地明察』にも登場した和算の大家の関孝和は、世界的な数学の業績をいくつも残し、「算聖」と呼ばれました。例えば、スイスの数学者のベルヌーイよりも1年早くベルヌーイ数を発見するなどしています。
また、和算家だけでなく庶民の数学の水準も高く、初等数学の集大成として知られる『塵劫記』は、広く歓迎され、類書が多数刊行されました。
和算家や市井の数学愛好家は、数学の問題を書いた「算額」と呼ばれる額を神社仏閣に奉納し、問題を解き合うという娯楽も楽しんでいました。
算額に記されたのは幾何学の問題がほとんどでしたが、中には、三角関数や積分法を駆使しなければ解けない難問もあり、現在でも、多くの人が趣味で算額を解いて楽しんでいます。

展示期間・場所

期間 6月1日(木曜日)~6月29日(木曜日)
場所 静岡県立中央図書館 入口入ってすぐの貴重書展示コーナー
(期間中、資料を入れ替えて展示します)

展示資料一覧

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書名等 画像 略説

419.1/ヨシ

『新編塵劫記(しんぺんじんこうき)


新編塵劫記

吉田光由(1598-1673)が編集した『塵劫記』は、江戸時代初期、寛永4(1627)年に出版され、大人気を得た算術書です。吉田は、その生涯において十数回にわたって『塵劫記』の増補・改訂を重ねましたが、その他にも様々な版が出されました。今回、展示してある『新編塵劫記』もその一冊ですが、江戸時代において最も普及した算術書とされています。

上巻には、そろばんによる乗除計算が主として掲載されています。中巻、下巻には、検地(田畑の面積計算)や川・堤の普請に関する実用的な問題と継子立て・ねずみ算等の遊戯的な問題とを取り混ぜて掲載されています。

419.1/サカ

『算法点竄指南録(さんぽうてんざんしなんろく)』

算法点竄指南録

5編15巻からなる『算法点竄指南録』は、坂部広胖による点竄の教科書です。「点竄」とは、和算における筆算式の代数術の事ですが、本書は初歩から高度な内容までその当時の数学が詳しく解説されており、点竄の優れた教科書として広く利用されました。また角術、累約術、累円術など幅広い分野を網羅しており、本書一冊で当時の和算全般を会得できるようになっています。

さらに、それまで雉、兎としてきたものを鶴と亀に変えていわゆる「鶴亀算」とした最初の本とされているほか、本書により日本で初めて対数表が公刊されたことでも有名です。

419.1/イソ

『増補算法闕疑抄(ぞうほさんぽうけつぎしょう)』

増補算法闕疑抄

奥州二本松藩士の磯村吉徳は万治2(1659)年に『算法闕疑抄』初版を著しました。初版は、高度なそろばん算法を詳しく解説し、『塵劫記』の遺題12問に解答をつけ、自作の遺題100問を提出しました。これは、『塵劫記』以来発達してきた数学の集大成と言われ、増補版を含め江戸時代を通して読まれました。

貞享元(1684)年に刊行した本書では、自ら頭注をつけ、それまでの誤りを正しています。たとえば、初版の『算法闕疑抄』では円周率を3.162としていますが増補版の頭注では円に内接する正13万1072角形の周の長さの計算によって円周率は3.14159...となることを記し、円周率を3.1416として計算することを提案しています。また、初版で提出した遺題100問に自ら解答をつけています。

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