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2023(令和5)年2月のWeb版貴重書展示「駿府風土記の富士山絵図」

駿府風土記
Q291-19
『駿府風土記(すんぷふどき)』

駿府風土記の富士山絵図

~Web版 貴重書展示~

2月23日は数字の語呂合わせで「富士山の日」です。富士山のお膝元である静岡県と山梨県では2月23日を「富士山の日」とする条例を制定しています。

また、今年は富士山がユネスコの世界文化遺産に登録されて10周年となります。古来、富士山は静岡や山梨の地域に限らず、多くの日本人の信仰の対象であり文化の源泉となってきました。現在の富士登山はレジャーとして多くの人に楽しまれていますが、かつては山岳信仰の登山として行われてきました。富士山の山岳信仰は世界文化遺産に登録された理由のひとつです。

せっかくの富士山の日ですが、今の季節は富士山登山道が閉鎖されており、登ることができませんので、各地で開催される関連イベントに参加されてはいかがでしょうか。

当館では、2月23日(木・祝)に貴重書講座「『駿府風土記』の富士山絵図~大宮・村山口登拝道の足跡をたどる~」を開催します。当館所蔵の地誌『駿府風土記』に掲載されている富士山絵図を読み解き、江戸時代の修験登拝道の足跡をたどる講座です。皆さまの御参加をお待ちしております。

展示期間・場所

期間 1月28日(土曜日)~2月27日(月曜日)
場所 静岡県立中央図書館 入口入ってすぐの貴重書展示コーナー
(期間中、資料を入れ替えて展示します)

展示資料一覧

画像をクリックすると、拡大画像が表示されます。

書名等 画像 略説

Q291-19
『駿府風土記(すんぷふどき)』
(前半のみ)

Q291-19_27.jpg

久能文庫の1冊で、駿府近郊の地誌です。原本の著者、成稿年は不明ですが、18世紀後半に記されたものと考えられます。郷土史家の足立(あだち)鍬太郎(くわたろう)氏(18671932)は、『駿国雑志(すんこくざっし)』に『駿府明細記』と記された書物ではないかと推測しています。

東海道筋から山頂に至る大宮・村山口登拝路が手彩色された富士図には、中宮・室大日などの失われた信仰施設が描かれています。右上に村山興法寺(こうぼうじ)の説明が記され、中央に村山の堂社と宿坊が描かれていることから、村山三坊版行の禅定図(ぜんじょうず)等を参考に描いたと考えられます。

S089.2/11
『富士山表口真面之図(ふじさんおもてぐちしんめんのず)』
(後半のみ)

富士山表口真面之図

明治13年、画工・彫工 太田駒吉(こまきち)によって改版された「富士山表口真面之図」と推測されます。版木(44.5cm×63cm)は村山浅間神社が所有し、富士宮市教育委員会が保管しています。本図は左右と下の部分が欠落しており、四隅に穴があけられています。また江戸時代の「富士山表口真面之図」と比べると、山頂「表大日(おもてだいにち)」が「頂上浅間神社」になり、村山修験が拠点とした富士山興法寺の管理の中心である大鏡坊(だいきょうぼう)辻ノ坊(つじのぼう)池西坊(ちせいぼう)の村山三坊がなくなっています。明治時代の神仏分離令で村山三坊の修験者は四散し、興法寺も廃寺になっているため、この絵が神仏分離以後に描かれたものであることがわかります。

K915-108-036-033
富士山諸人参詣之図(ふじさんしょにんさんけいのず)』
(前半のみ)

富士山諸人参詣之図富士山諸人参詣之図富士山諸人参詣之図

開国による自由貿易の開始により、生糸・茶・海産物などが輸出され、米・砂糖などが輸入されました。これに伴い、値段の上がる物下がる物、はやる物すたれる物ができましたが、その様子を富士講の登山・下山に見立てたものです。左手の下山する人の笠に書かれている品物は下がり、右方の登山連の笠に書かれている品物は上がっています。二代歌川国輝は相撲絵や開化絵、鉄道絵、特に明治開化絵に優れた作品を残しました。風景表現には、『空飛ぶ絵師』と呼ばれる歌川貞秀(さだひで)の影響が認められます。

K915-108-036-009
富士裾野巻狩之図(ふじのすそのまきがりのず)
(後半のみ)

富士の裾野巻狩之図富士の裾野巻狩之図富士の裾野巻狩之図

歌川貞秀は、嘉永2、3年頃に体験した富士登山をきっかけに、絵画に遠近法を使用するようになり、俯瞰(ふかん)的な構図や幾何学的な事物を作品の中で表現していきます。本図は「吾妻鏡」などに書かれた富士の巻狩の場面で、源頼朝をはじめとする人物や獲物の猪や鹿などが、単純化され狩場を走り回る様子が描かれています。

貞秀は美人画・武者絵・風景画・団扇(うちわ)絵などに巧みであり、作品の特徴が鳥瞰(ちょうかん)図であることから『空飛ぶ絵師』と呼ばれ、横浜浮世絵と呼ばれる様式の第一人者としても有名です。

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