2022(令和4)年5月のWeb版貴重書展示「新茶の季節」
K088-9
『栽茶説(さいちゃせつ)』
明治初期は、世界的なお茶の需要もあり、お茶は生糸と並ぶ日本の主要輸出品目となりました。明治政府は、お茶を海外輸出向け品目として戦略的に生産を拡大しました。静岡県でも牧之原台地の開墾などにより大幅なお茶の増反が行われたのは、立地条件的な理由もありましたが、当時、お茶が有望な商品作物として期待されていたためです。
こうした後押しもあって、静岡でのお茶の生産量は増え、京都の宇治などから栽培技術や製茶技術を導入も進められました。やがて「ころがし」「でんぐり」といった独自の手揉み製法を考案し、静岡は日本を代表するお茶の産地としての地位を確立していきます。
当館の特殊コレクションである「久能文庫」は、初代静岡県知事である関口隆吉が収集した資料ですが、その中には茶業に関する本も多く、県内の茶業を振興していこうという知事の姿勢が感じられます。
展示期間・場所
期間 4月29日(金曜日)~5月29日(日曜日)
場所 静岡県立中央図書館 入口入ってすぐの貴重書展示コーナー
展示資料一覧
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書名等 | 画像 | 略説 |
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K088/9 『栽茶説(さいちゃせつ)』 |
「栽茶説」は地形論や播種論、培養論など7冊からなる資料です。栽培に適した地形から、種の選び方などの栽培法だけでなく茶園の経営法についてまで詳細に書かれています。摘採論では、製茶に適した新芽について、種類図解では、葉の様子や枝ぶり、花の形や色からランク付けされた茶が色鮮やかな絵入りで紹介されています。 冒頭部分に「本編はすべて海外輸出貿易の為の製茶を主論とし」とあり、日本の緑茶を世界にアピールしようと意気込む先人たちの熱意がうかがえます。 |
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Q617-4 『茶業須要(ちゃぎょうしゅよう)』 |
茶園の仕立て方、茶樹及び種子の選び方、蒔き付け、刈り込み、台卸(だいおろし)(やせた茶園を回復するため、茶樹を根元から刈り去ること)、耕耘(こううん)(田畑を耕し、雑草を取り去ること。耕して作物を作ること)、肥料、摘葉、製茶法、生葉の囲い方、玉露覆いかけの方法などについて述べています。著者の酒井は静岡県勧業課御用掛として県内各地で茶の栽培の指導を行っています。 |
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Q617-5 『茶業改良法(ちゃぎょうかいりょうほう)』 |
静岡市寶臺院(宝台院)で多田元吉(ただもときち)が行った、明治20(1887)年11月6~8日の3日間にも及んだ「茶業説話会」での講話を文字化したものです。『静岡大務新聞』に全文掲載され、その後静岡県が出版しました。 |