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2022(令和4)年3月・4月のWeb版貴重書展示「花を愛でる」

卯月の深見草

K915-108-034-022
『桜花遊覧(おうかゆうらん) 雪月花(せつげつか)の内(うち) 隅田川(すみだがわ)風景(ふうけい)』

花を愛でる

~Web版 貴重書展示~

江戸時代後期、園芸が空前の大ブームになった江戸の町では、将軍に始まり大名、旗本から町人などの庶民に至るまで庭で草木を育て、室内には生け花をかざり、花や緑を愛でていました。
また、現代では「花見」と言えば桜のことですが、江戸時代の花見は「梅に始まり菊に終わる」といわれ、桜のほか梅・桃・桜草・つつじ・山吹・藤・牡丹・萩・菊など四季折々の多様な花見を楽しんでいました。
今回の展示では、春の花に親しむ人々が描かれた浮世絵と、江戸の草花愛好ブームの熱を伝える園芸書を通して、平和な時代に花開いた江戸の園芸文化を紹介します。

展示期間・場所

期間 3月1日(火曜日)~4月27日(水曜日)
場所 静岡県立中央図書館 入口入ってすぐの貴重書展示コーナー
(期間中、資料を入れ替えて展示します)

展示資料一覧

画像をクリックすると、当館デジタルライブラリーの該当資料が表示されます。

書名等 画像 略説

627/アオ

『草木奇品家雅見(そうもくきひんかがみ)
(3月のみ)

草木奇品家雅見

江戸青山の種樹(園芸)家である金太(きんた)による植物の奇品を集めた図録。当時斑入りや奇態といった植物の変わり物を愛好する風潮があり、好事家が競って集めました。種樹家の金太がその風潮に乗るのは必然であり、また金太自身も奇品を好んだので珍しい園芸植物の所在を聞けば、画家を伴ってその所有者を訪ね、写生し来歴を詳しく書き留めたそうです。

今回展示の梅と桜の番付表では様々な品種を相撲の番付表に見立てて紹介しています。相撲の番付への見立ては現代でも目にするもので親しみがわきます。また、その中身を見ると梅の行司の欄には紀貫之の娘の歌で有名な「鴬宿梅(おうしゅくばい)」が見え、桜の西の前頭にある「吉野山」は現代の「ソメイヨシノ」だと考えられる桜であることなど、現代でもよく知られた名前が確認できるというのもおもしろいですね。

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『十二ひと絵 衣更着(きさらぎ)の梅見(うめみ)』
(3月前半のみ)

 衣更着の梅見

美人画を得意とした周延による、花を愛でる女性を主題とした全12図からなる連作中の一点です。

「衣更着」は、寒さが残っているので衣(きぬ)を更(さら)に着(き)る月、旧暦2月(新暦では3月頃)の如月(きさらぎ)の異称です。旧暦2月は梅見月(うめみづき)ともいいます。
この錦絵には華やかな着物で梅を鑑賞する3人の女性の姿が描かれています。うぐいすも飛び交い早春の華やぎが感じられます。

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『江戸名所飛鳥山花見の図』
(3月後半のみ)

江戸名所飛鳥山花見の図

飛鳥山は現在の東京都北区にある飛鳥山公園で、明治6年に日本初の公園の一つに指定され、今も花見の名所として親しまれています。飛鳥山の桜は、八代将軍吉宗の命により植樹がすすめられたとされ、江戸庶民に開放されていました。ここでは飲酒や歌ったり踊ったりすることが許されていたため、にぎやかに花見を楽しみたい人々にとっては格好の場所でした。

寛政(1790年代)の頃から、この錦絵のように、お揃いの日傘や手ぬぐいなどで着飾った弟子を、手習い(読み書き)や音曲(日本の伝統音楽)の師匠が引き連れて花見に行く姿が目立ったようです。かなり大掛かりな行列もあり、親も裃(かみしも)姿で同行したとか。師匠間の宣伝競争も激しかったようで、派手な花見行列は、江戸時代のビジュアルマーケティング戦略といえるかもしれません。

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『桜花遊覧(おうかゆうらん) 雪月花(せつげつか)の内(うち) 隅田川(すみだがわ)風景(ふうけい)』
(4月前半のみ)

隅田川風景3隅田川風景2隅田川風景1

周延は天保9(1838)年8月8日、越後高田藩士の嫡男に生まれましたが、狩野派を学んだ後、浮世絵に転じ国芳(くによし)や国貞(くにさだ)の門人となり、国周(くにちか)を師と仰ぎました。
明治20年代は最も華やかに活躍した頃で、彼の美人画はのちに"周延(ちかのぶ)美人(びじん)"と称されました。「桜花遊覧 雪月花の内」は他にも様々な構図や人物を描き、隅田川を背景に洋装の人物を描いた錦絵も残っています。

この絵は今、屋形船から降りたと見える幼女を中心に、手をとり、船から見送り、また行く先で手招きする、様々な年代の女性たちが、その足元を暖かく見守っています。

K756/1

『本草(ほんぞう)図譜(ずふ)』
(4月後半のみ)

本草図譜

『本草図譜』は岩崎潅園(かんえん)が各地を踏査して写生した2,000種もの植物図に解説を添えた書で、わが国最初の本格的な植物図鑑といわれています。文政11(1828)年に完成はしたのですが、出版費用が工面できず文化13(1813)年に山草部、芳草部の巻五~十が出版されたのみで、大正期になって初めて全冊が刊行されました。

「本草」とは特に漢方で薬草となる植物のことを意味します。『本草図譜』でも前半は重要な漢薬を扱うなど、漢薬の図譜の紹介を目的にすえていますが、後半に行くにつれて薬用植物だけではなく、園芸植物も取り上げています。特にハスは4冊、ツバキ、ムクゲは各1冊を用いて説明するなど品種図鑑の体をなしています。

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『十二ひと絵 卯月(うづき)の深見草(ふかみぐさ)』
(4月後半のみ)

卯月の深見草

美人画を得意とした周延による、花を愛でる女性を主題とした全12図からなる連作中の一点です。

卯月(旧暦4月)に深見草(牡丹の別名)を鑑賞する女性と少女の姿が描かれています。牡丹だけでなく藤の花も枝垂れており、左側の女性は藤の花を観賞しているようにも見えます。少女は大きな鉢の縁に手を置き、自分の顔より大きな牡丹の花に顔を近づけて香りを楽しんでいるようです。

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