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2022(令和4)年11月のWeb版貴重書展示「鉄道開業150周年」

A manual of the steam engine and other prime movers
AE182『A manual of the steam engine and other prime movers』
(蒸気機関およびその他の原動機)

鉄道開業150周年~

~Web版 貴重書展示~

幕末期、イギリスが中国を武力で圧倒したアヘン戦争は、日本にとってかなり衝撃的な事件でした。特に、イギリスの蒸気船は日本にとっても脅威であったらしく、幕府や諸藩は、黒船来航(嘉永6(1853)年)の10年以上前から蒸気機関の研究を行ってきました。旧幕府の蔵書からなる当館の葵文庫に蒸気機関についての洋書があるのは、そのような時代を表しています。

そうした研究の成果もあり、黒船来航のわずか2年後には、初の国産蒸気船「雲行丸」が完成し、明治5(1872)年には、初めての鉄道が新橋-横浜間で開業しました。さらに、その17年後には東海道線が全通するなど、日本の鉄道網は驚異的な発展を遂げます。これにより、日本人の時間の使い方の概念も大きく変わりました。

煙を吹き上げながら猛スピードで駆け抜ける蒸気機関車は、当時の人々にとってまさに文明開化の象徴であり、浮世絵の題材にも盛んに取り上げられました。

展示期間・場所

期間 11月1日(火曜日)~11月29日(火曜日)
場所 静岡県立中央図書館 入口入ってすぐの貴重書展示コーナー
(期間中、資料を入れ替えて展示します)

展示資料一覧

画像をクリックすると、拡大画像が表示されます。

書名等 画像 略説

AN039
『Eerste grondbeginselen der natuurkunde
(理学事始)

Eerste grondbeginselen der natuurkunde

本書は、P.ファン・デル・ベルグ(1808-1889)によって書かれた理学書(理学=物理学、化学、天文学などの総称、自然科学)です。ファン・デル・ベルグの著書の中でも最も本格的な理学書と評価され、わが国でも広く利用されました。蘭学者の川本幸民(かわもとこうみん)が「講習の余話」として語った、ヨーロッパの便利な機械や道具の紹介を門人たちがまとめた『遠西奇器述(えんせいききじゅつ)』は、直写影鏡(銀板写真)、伝信機、蒸気船、蒸気車、写真器、燐柳(マッチ)、気球など様々な機器を紹介していますが、その種本が本書でした。

内容は、西洋の科学技術の原理、構造、利用の仕方、技術上のことなどを詳細に記しており、蒸気機関や蒸気車では内部の仕組みが分かる断面図まで掲載されていて、当時の人々の知的好奇心を刺激したであろうことがうかがえます。

AE182『A manual of the steam engine and other prime movers』
(蒸気機関およびその他の原動機)

A manual of the steam engine and other prime movers

著者のランキンは、蒸気機関の技術を科学にまで高めた最大の功労者でもあり、「エネルギー」という言葉が一般に使われるようになったのは、彼の用法によるものです。

本著の「熱力学」の章で唱えている蒸気タービンの理論サイクルはランキンサイクルと呼ばれ、蒸気機関の基礎をなしており、熱力学の古典的名著として、現在でも出版されています。

K915-108-022-055
『東京名所図会新橋ステンション蒸気発車』
(11月前半のみ)

東京名所図会新橋ステンション蒸気発車 旧新橋駅を描いた錦絵です。明治59月、日本最初の鉄道路線の起点として新橋駅は開業しました。当時の新橋駅を描いた浮世絵は広重のもの以外にも多く残されており、まさに文明開化を象徴するものであったことがうかがえます。木造石張り2階建ての西洋建築の駅舎は、長らく東京のターミナル駅として機能していましたが、大正3年、東京駅ができると旅客営業が廃止され、汐留駅(国鉄)と名を変え貨物駅となりました。近年、旧新橋駅の跡地は発掘調査が行われ、現在は駅舎が復元されています。

K915-108-053-017
『写真名所一覧高なは蒸気車往返之図』
(11月後半のみ)

写真名所一覧高なは蒸気車往返之図

赤と緑の鮮やかな配色の列車が海上の築堤(ちくてい)を走る様子がよくわかるこの絵は、国政による鉄道錦絵です。国政は役者絵を得意としましたが、文明開化の様子を描いた錦絵も数多く残しています。

当時、高輪(たかなわ)(品川)付近では線路用の土地が確保できず、海上の埋め立て地に線路を敷設(ふせつ)した区間がありました。この高輪築堤は、2019年の品川駅改良工事の際に石積みの一部が、2020年には高輪ゲートウェイ駅付近で遺構が発見されています。

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