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2021(令和3)年7月・8月のWeb版貴重書展示「辞書・辞典」

附音挿図・英和字彙

830.3/111『附音挿図・英和字彙

辞書・辞典

~Web版 貴重書展示~

嘉永6(1853)年のペリー来航、安政5 (1858)年の日米修好通商条約の締結と、日本の開国に主導的な役割を果たしてきたのはアメリカでした。それに応じて洋学の主流もオランダ語から英語へと移っていきました。また、幕府は英米の最先端技術を取り入れ、その進出に対抗することを急務としましたが、当時、オランダ語の堪能な蘭学者は多くいても、英語の分かるものはほとんどいませんでした。

そこで、英蘭辞典などオランダ語との対訳辞書を積極的に入手し、それらを底本に日本語との対訳辞書を編さんし、洋書の翻訳を行いました。

辞書は軍事と交渉のための武器として始まりましたが、その後通商の道具へと広がり、国際理解と異文化交流を支えるものへと発展していきました。

展示期間・場所

期間 7月1日(木曜日)~8月29日(日曜日)
場所 静岡県立中央図書館 入口入ってすぐの貴重書展示コーナー

展示資料一覧

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書名等 画像 略説

AN173
『A New Pocket Dictionary of the English and Dutch Languages(新ポケット英蘭辞典)』


新ポケット英蘭辞典

本文は、英語の見出し語に対し、対訳のオランダ語がイタリック体で記載されているオランダで発行された辞典です。標題紙には、開国により輸入書に押された検閲印「神奈川会所改(かながわかいしょあらため)」の印記があります。

この辞典に記載されたオランダ語部分を、主に1858年に出版された蘭日辞典である『和蘭字彙(おらんだじい)』の訳語によって置き換えて編纂(へんさん)したものが、今回同時に展示している日本で最初に刊行された活字の英和辞典『英和対訳袖珍(しゅうちん)辞書』とされています。

今回の展示にはありませんが、『和蘭字彙(おらんだじい)』(請求記号:AN283)も当館貴重書として所蔵しています。

K012/58
『改正増補 英和対訳袖珍辞書』

K012-58.jpg

時は幕末、対外情勢の変化に伴い英語が重要視されていく中で、活字版として最初に刊行された英和辞典が本書です。H.Picard編『A New Pocket Dictionary of the English and Dutch Languages(新ポケット英蘭辞典)』(第2版・1857)が原書で、オランダ語の部分に日本語の訳語をあてはめています。初版は英語の部分は鉛製活字、日本語の部分は木版で印刷されたのに対し、改正増補版は英語部分も木版で印刷され、和丁(表裏2ページで1丁)で出版されました。また、原書はタイトル通りのポケット版で、訳語の「袖珍(しゅうちん)」も、袖(そで)の中に入るくらいに小型なもの、という意味ですが、実際には原書より大きなものとなり、その形が木枕に似ていることから「枕辞書(まくらじしょ)」とも称されました。

本書は、英語通訳として活躍した堀達之助(ほりたつのすけ)(1823-1894)が中心となって、幕府の洋書調所(ようしょしらべしょ)において編纂(へんさん)されました。初版が文久2(1862)年に2両で発売されると、すぐに売り切れてしまい、プレミアがついたと伝えられています。

830.3/110
『英和対訳袖珍辞書』

英和対訳袖珍辞書英和対訳袖珍辞書

AN91

『English and Dutch dictionary

Nederduitsch en Engelsch

woordenboek
(英蘭対訳字書)』

英蘭対訳字書

安政の五か国条約(安政5年)により、横浜は開港しました。その外国人居留地を訪れた福沢諭吉は、今まで学んできたオランダ語が役に立たないことに気づき、代わりに英語を学ぶことを決意しました。横浜のドイツ商人から買った蘭英会話書を読むために辞書が必要となり、購入した「ホルトロップという英蘭対訳発音付の辞書一部二冊物」(『福翁自伝』より)と同書は同版です。

第1巻が英蘭辞書、第2巻が蘭英辞書となっています。

830.3/111

『附音挿図(ふおんそうず)・英和字彙(えいわじい)』

附音挿図・英和字彙

本書はイギリス人ジョン・オウグルビィ-(John Ogilvie 1797-1867)著の総合辞典『The comprehensive English dictionary』を元に編集された、55,000語収録、1,546ページの辞書です。「附音(ふおん)」は発音記号(ウェブスター式)、「挿図(そうず)」は挿絵があることで、日本初の挿絵入りの英和辞典とされています。

この展示資料は初版で、縦書の訳語にかなヨミをつけ、横に寝かせて表示していますが、2版は英語と同じ横書に変えてかなヨミは削除されました。しかしその後は再び縦書を寝かせた形に戻し、かなヨミも復活しています。

柴田昌吉(しばたまさよし)は長崎出身の通詞(つうじ)(通訳)で後に外務省に勤務、子安峻(こやすたかし)は蘭学を学び活版印刷の日就社を設立、明治7年「読売新聞」を創刊し初代社長になりました。

この辞典では『和英語林集成』(明治5年刊)に初めて掲載された「Statistics」の訳「実際のありさま(情実)をしらべること」を「統計表」とするなど、より現代に近い訳語になっています。

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