パンくずリスト:このページは ホーム »の下の デジタルライブラリー »の下の しずおかの貴重書常設展示 »の下の 2021(令和3)年3月のWeb版貴重書展示 「葵文庫と静岡学問所」 です

2021(令和3)年3月のWeb版貴重書展示 「葵文庫と静岡学問所」

新ポケット英蘭辞典

AN173
『A New Pocket Dictionary of the English and Dutch Languages(新ポケット英蘭辞典)第2版』

文庫と静岡学問所

~Web版 貴重書展示~

葵文庫に辞書が多い理由

『葵文庫』とは当館の特殊コレクションのひとつで、江戸幕府が収集した書物3,586冊からなります。その中でも西洋の書物は2,325冊と3分の2以上を占めますが、それは19世紀以降、幕府は欧米列強に対抗するため、西洋の技術や知識を積極的に入手する必要があったからです。
そのような理由から、葵文庫所蔵の洋書には工学や兵学のような技術書の割合が高いですが、仏蘭辞典などの辞書類も多く含まれています。当時、日本にはオランダ語の堪能な蘭学者は多くいましたが、当時の先進国であるイギリス・フランス・ロシアの言語が分かる学者はほとんどいませんでした。そこで、英蘭辞典などオランダ語との対訳辞書を積極的に入手し、それらを底本に日本語との対訳辞書を編さんし、洋書の翻訳を行いました。
 また、『西国立志編』をはじめ、当時の教科書的役割を果たしたものもあり、「葵文庫」は、近代における日本の急成長を支えた多くの書物がコレクションされている貴重な文庫です。

展示期間・場所

期間 3月2日(火曜日)~3月30日(火曜日)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室 貴重書展示コーナー
(期間中、資料を入れ替えて展示します)

展示資料一覧

画像をクリックすると、当館デジタルライブラリーの該当資料が表示されます。

書名等 画像 略説
AN173
『A New Pocket Dictionary of the English and Dutch Languages(新ポケット英蘭辞典)第2版』
※前半のみ
新ポケット英蘭辞典

本文は、英語の見出し語に対し、対訳のオランダ語がイタリック体で記載されています。483ページと厚みはありますが、大きさは15×12cm、文庫本より少し幅広のポケットサイズです。標題紙には、開国により輸入書に押された検閲印「神奈川会所(かいしょ)改(あらため)」の印記があります。

編者Picardはオランダ語読みで「ピカルト」、出版地 Zalt-Bommel(ザルトボメル)は、オランダ南部ヘルダーラント州にある都市です。

この第2版に記載されたオランダ語は、主に『和蘭字彙(おらんだじい)』(当館所蔵:AN283)の訳語によって翻訳され、日本で最初に刊行された活字本『英和対訳袖珍(しゅうちん)辞書』(当館所蔵:830.3/110)の作成につながりました。

AG019
『Kanban doitsutangohen(官版獨逸單語篇(かんぱんどいつたんごへん))』
※前半のみ

官版獨逸單語篇

本書は、日本最初のドイツ語辞書です。木版刷り25丁(49ページ)の和綴じ本で、22のジャンルに分けられて、1,879語(重複あり)の単語等が収録されています。

ただし、すべての単語に、日本語の訳語は付けられていません。編集した「洋書調所(ようしょしらべしょ)」は、安政3(1856)年に江戸幕府の洋学教授および洋書・外交文書の翻訳などのために設立された洋学研究機関「蕃書調所(ばんしょしらべしょ)」の後身で、この後に組織を拡充し「開成所(かいせいじょ)」と改称されました。(この「開成所」は、今日の東京大学の前身となった組織の一つです。)

なお、当館所蔵本には、4ページまでの92語のドイツ語に日本語訳が朱書きされています。また本書は、当館の他、早稲田大学図書館等が所蔵しています。

159/107
159/21
『西国立志編(さいごくりっしへん)』
※後半のみ

西国立志編

「天ハ自ラ助クルモノヲ助ク」の言葉で有名な本書は、静岡学問所の教授であった中村正直(敬宇)(天保3(1832)年~明治24(1891)年)が、サミュエル・スマイルズ著の"Self‐Help"『自助論』を翻訳・出版したものです。

幕府の留学生の取締役として、慶応2(1866)年からロンドンに約1年半滞在の後、大政奉還により帰国することになった際に、友人のフリーランドから贈られ、愛読したのが"Self‐Help"でした。この本は、ジェンナー(種痘)やワット(蒸気機関)など300人以上の小伝を集めたもので、明治維新という大変革期の中で生き方を模索している青年層に大きな影響を与えることとなりました。

初版は静岡藩の援助を得て静岡で出版され、明治期を通じた大ベストセラーとなり、国民的教科書の役割を担いました。本書は11冊(13編)からなり、当館の蔵書にはそれぞれ欠本がありますが、摺り、装丁が異なる3種類を所蔵しています。

AN282
『Koutetsuzenshozu(熕銕全書圖(こうてつぜんしょず))』
※後半のみ

熕銕全書圖

ヒュゲニン著『ロイク国立製鉄大砲鋳造所における鋳造法』は、大砲の鋳造法を詳述したオランダの技術書で、『鉄熕全書』『西洋鉄熕鋳造篇』『鉄熕鋳鑑』などの翻訳書があります。これらの翻訳書は、韮山や佐賀の反射炉を造築するにあたって大いに参考にされました。

当館所蔵の『熕銕全書圖』は、附図の箇所を毛筆で正確に写したもので、本編部分はありません。

貴重書展示一覧に戻る