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2020(令和2)年6月・7月Web版貴重書展示 「江戸の医学書」

名勝写真帖

K772/3『病家須知』より

江戸の医学書

~Web版 貴重書展示~

現在、国内外においてコロナウイルスが流行しており、様々な立場の人びとがその対策に追われています。遡って、江戸時代においても、天然痘、麻疹及び水疱瘡の御役三病、末期においてはコレラが流行していました。江戸時代の医療の様子はどのようなものだったのでしょうか。

江戸時代後期の医療は、現代人が想像する以上に高度だったようです。それは、鎖国下にあっても、オランダや中国から最新医学の知識を学んだからでもあります。世界で初めて全身麻酔に成功した華岡青洲や、『解体新書』を著した杉田玄白らも蘭方医学を学びました。江戸時代後期には、シーボルトらを通じて、多くの医者が蘭方医学を学び、日本に西洋医学が定着していきます。日本近代医学の基礎を築いた松本良順も長崎で蘭学を学んだ一人です。

庶民の医療については、看病と予防に重点が置かれていましたが、健康・医療の知識は庶民にも浸透していたようで、貝原益軒の『養生訓』や、『病家須知』などの医学書・養生書は、広く庶民にも読まれていました。

展示期間・場所

期間 6月16日(火曜日)~7月30日(木曜日)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室 貴重書展示コーナー

展示資料一覧

画像をクリックすると、拡大画像が表示されます。

書名等 画像 略説
K770/12
『西医略論』
西医略論表紙西医略論内題西医略論本文

『西医略論』は、イギリス宣教医ベンジャミン・ホブソン(18161873 漢字表記は合信)が著した西洋医学書を、三浦艮斎(ごんさい)(18171868 江戸後期の蘭方医)が翻刻した書籍です。全三巻で、上巻は東西医学および病症の総論、中巻は骨や各部位の疾患、下巻は治療薬

についてまとめています。図入りで、手術方法などが詳しく記述されています。

490.9/24
『医方正伝』
医方正伝表紙医方正伝見返し医方正伝前書医方正伝内題

『医方正伝』は、現在の静岡市葵区安西の煙草販売の商家に生まれた花野井有年(はなのいありとし)(17991865)が53歳のときに著した医学書です。江戸や大阪で蘭方や漢方を学び、27歳で駿河において蘭方医として開業しますが、天保の大飢饉などで家族を次々と失った彼は蘭方や漢方に失望し、日本古来の環境に適した和方が良い、と和方家に転身します。

上巻は我が国の医方は神々が始めて後世に伝えたもので「外国々に勝りていとも尊き正伝なりけり」と蘭方や漢方を批判し、下巻は日本古来の治療法を主張し、古来からの薬法を神髄(かみながら)に従うことが正しい(医方正伝(くすしのみつたえ))と結論付けています。

K772/3
『病家須知』

病家須知表紙病家須知扉病家須知本文

「病家須知」は日本で最初の家庭医学の本であり、タイトルは「病人のいる家はすべからく知っておくべし」という意味です。官職につかず庶民の治療にあたった武家出身の町医者平野重誠(しげまさ)42歳になって満を持して記した処女作がこの本です。

その内容は日々の養生の心得、病人看護の心得、食生活の指針、伝染病の考え方、医師の選び方などの多岐にわたり、漢字には読み仮名がふられ、多少読み書きができる一般庶民向けに書かれています。

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