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2020年(令和2年)5月・6月Web版貴重書展示 「新茶の季節」

『皇国製茶図会』画像

新茶の季節
~Web版 貴重書展示~

※緊急事態宣言の緩和に伴い開館(一部利用制限あり。詳細はこちら)いたしました。貴重書展示についても5月12日より開始いたしました。Web版と併せてご利用ください。(5月12日追記)

新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の発令を受けて、県立中央図書館も臨時休館をしており、利用者の皆様にはご不便をおかけしております。そこで、今回は"Web版 貴重書展示"を行います。実物をご覧いただくことはできませんが、デジタルライブラリーの画像をご覧いただいて、ひととき貴重書の世界を楽しんでいただければ幸いです。

5月は、静岡にとっては新茶の季節であり、おいしい新茶の香りを楽しむことのできる時期です。外出自粛の日々ではありますが、新茶を手に、県立中央図書館の持つコレクションの中から、静岡を代表する産業の茶業に関する貴重書をお楽しみください。

「静岡」での茶の始まりは、鎌倉時代、安倍郡大川村(静岡市)出身の聖一国師(しょういちこくし)が中国()から持ち帰った茶の種を、安倍郡美和村(静岡市)にまいたことから始まったと伝えられています。また、この地域に初めて煎茶の製法を伝えたのは、志太郡伊久美(島田市)坂本藤吉(さかもと とうきち)で、天保8年(1837)、私財を投じて宇治の茶師を招き、蒸製煎茶法などの製法を学び、また志太郡の人々にも伝授しました。もともと「静岡」の地勢や気候等が茶の栽培に適していたことに加え、安政6年(1859)に開港した横浜港から、茶の海外輸出が増大したため、この地に多くの茶園が作られ、特に明治になってから「静岡」の茶業は飛躍的に発展し、日本有数の生産地となっていきました。茶の輸出に関しては、『皇国製茶図会』(K915/108)からその盛況ぶりをうかがい知ることができます。

この時期の茶業の振興に貢献した人物に、初代静岡県知事となった関口隆吉氏がいます。関口は明治3年(1870)、旧幕臣の生計樹立のため牧之原台地の開墾に着手し、日本一の大茶園造成という大事業の礎を築きました。関口が私財を投じて集めた図書資料、2454冊からなる久能文庫(当館の特殊コレクション)にも、お茶に関する資料が多数含まれています。例えば、『製茶新説』は、明治6年(1873)に農民を対象に出版された書物ですが、上巻では茶実の善し悪し、茶実蒔き方、茶花、茶木の雄雌の見分け方、茶木の培養、茶葉摘み方、肥料、下巻では製茶法、覆下茶、霜除け、害虫予防など、図入りで分かりやすく記されています。

また、現在、静岡茶の9割を占めている品種「やぶきた」は、明治4年(1908)に安倍郡有度村(静岡市)の杉山彦三郎(すぎやま ひこさぶろう)氏が在来種の中から見つけた品種です。「やぶきた」の名は、竹やぶを開墾した静岡県茶業試験場試験園の北側にあったことに由来しており、今でも図書館に向かう坂道の途中には、杉山氏が選抜した「やぶきた」の母樹が移植され県の天然記念物に指定されています。今、日本で生産されている「やぶきた」は、全てこの樹から分かれたものです。

当館が無事開館したあかつきには、ぜひ原樹や茶の薫りを楽しみながら、当館へもお越しいただき、静岡のお茶の源流に触れてみてください。

展示期間・場所

期間 5月1日(金)~6月14日(日)

場所 静岡県立中央図書館 閲覧室 貴重書展示コーナー

展示資料一覧

画像をクリックすると、当館デジタルライブラリーの該当資料もしくは拡大画像が表示されます。

書名等 画像 略説

【久能文庫】
Q617-1
『製茶新説』
『製茶新説』画像

茶業を営むにあたり必要な技術(茶実のまき方や摘み方、製茶法や霜よけ、害虫予防など)を図入りで解説した本です。

書名に"製茶"とありますが、茶木の栽培方法に重点が置かれた内容となっています。

【浮世絵】
K915-108-054-027
『皇国製茶図会 第五号 蒸せし葉を丸め日に晒す図』
『蒸せし葉を丸め日に晒す図』画像  『皇国製茶図会』は、明治時代の製茶産業における生産・取引・出荷などの各場面を描いた連作です。
 農家の庭先で、蒸された茶葉が筵に広げられ、女性たちが作業をしています。
【浮世絵】
K915-108-054-027
『皇国製茶図会 第十四号 海岸荷揚の図』
『海岸荷揚の図』画像  箱詰めされたお茶は海路で横浜に運ばれました。大きな茶箱を運ぶ人足と、モダンな洋服姿の男性、着物姿の子供が描かれ、江戸と明治の風俗が混在した当時の様子を伝えています。
【浮世絵】
K915-108-054-028
『皇国製茶図会 第十六号 商館売込の図』
『商館売込の図』画像  荷揚げされた茶箱は、仲買人が外国商館に出かけ売込みの交渉をしました。商館側では交渉上手な中国人が対応にあたりました。
【久能文庫】
Q617-2
『茶業必要』
『茶業必要』画像

茶樹栽培、茶摘み、中国の茶園、緑茶・紅茶の製法などについて記されています。

明治時代、茶は生糸に次ぐ重要な輸出品目であり、本書をはじめ、多くの茶業技術書が出版されました。

【久能文庫】
Q617-3
『茶務僉載』
『茶務僉載』画像

中国の胡秉樞氏が「日本の茶質は素晴らしいが、製法に向上の余地がある」と持参した自筆資料を、内務省が翻訳・出版した資料です。そのため、挿絵の作業風景が中国人で描かれています。

【浮世絵】
K915-108-054-029
『皇国製茶図会 第十七号 製茶見本検査の図』
『製茶見本検査の図』画像

仲買人から外国商館に納められたお茶は、商館側で品質検査、量目検査を行いました。外国商館ではこのために専門の検査員を雇い、厳しく検査を行ったそうです。

【浮世絵】
K915-108-054-029
『皇国製茶図会 第十八号 商館再焙の図』
『商館再焙の図』画像

外国商館に届いたお茶は、長い太平洋の航海に備え、商館内にあるお茶場でもう一度焙煎されました。

左奥では、たくさんの女工たちが窯で、手前では男性が籠を使って茶を煎っています。

【浮世絵】
K915-108-054-030
『皇国製茶図会 第二十号 汽船海外へ出帆の図』
『汽船海外へ出帆の図』画像

再焙煎されたお茶は蒸気船に積み込まれ、横浜・神戸・長崎の港から遠くアメリカやヨーロッパの市場に輸出されて行きました。

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