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2022(令和4)年12月・2022(令和5)年1月のWeb版貴重書展示「三国志」

団十郎の玄徳と芝翫の関羽団十郎の玄徳と芝翫の関羽団十郎の玄徳と芝翫の関羽
K915-108-034-001
団十郎(だんじゅうろう)の玄徳(げんとく)芝翫(しかん)関羽(かんう)

三国志

~Web版 貴重書展示~

世界中の人々に愛されてきた「三国志」。現代の日本でも吉川英治や宮城谷昌光の小説、横山光輝のマンガ、NHKの人形劇、映画「レッドクリフ」、TVアニメ、ゲームなど、「三国志」を題材とした作品が多くあります。

「三国志」には、歴史書『三国志』と、『三国志』を元に創作した小説『三国志演義』の2種類があります。後漢末期から魏(ぎ)呉(ご)蜀(しょく)の三大勢力が台頭し、魏から代わった晋が天下を統一するまでの三国時代(220~280年)を題材にしており、『三国志』は魏を中心にまとめた史実書(正史)ですが、『三国志演義』は蜀を中心とし、民間講談も交えて、劉備(りゅうび)(玄徳(げんとく))関羽(かんう)張飛(ちょうひ)諸葛亮(しょかつりょう)(孔明(こうめい))などの人物を魅力的に描いています。

正史『三国志』が日本に伝えられた時期は不明ですが、江戸時代前後に『三国志演義』が日本に入ってくると熱狂的な盛り上がりを見せ、歌舞伎に浮世絵、読み本、川柳、見世物など庶民の日常まで広がり大ブームを巻き起こしました。「三国志」はその後も繰り返しブームを起こしながら、現代まで読み継がれてきました。今月の展示では当館所蔵資料からその一端を覗いてみます。

展示期間・場所

期間 12月1日(木曜日)~2023(令和5)年1月15日(日曜日)
場所 静岡県立中央図書館 入口入ってすぐの貴重書展示コーナー
(期間中、資料を入れ替えて展示します)

展示資料一覧

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書名等 画像 略説

K083/61
『三国志

三国志

三国志は3世紀の中国における魏(ぎ)呉(ご)蜀(しょく)の三国時代の歴史書で、『魏書』30巻、『呉書』20巻、『蜀書』15巻の全65巻からなっています。『史記』『漢書』『後漢書』と合わせて「四史」と称され、中国の正史であり、代表的な歴史書の一つとされています。この書はわが国にとっても大変重要で、『魏書』(通称:魏志(ぎし))の「東夷伝(とういでん)」の中にある「倭人(わじん)条」は、わが国に関する最古のまとまった記録であり、「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」の通称で知られています。一方で、日本における邪馬台国(やまたいこく)の位置など、その記述をめぐっては、研究者だけでなく古代史に興味を持つ一般の人々も巻き込んで、今日まで論争が絶えることなく続いています。

K082/93
『増像全図三国志演義』

増像全図三国志演義

『三国志演義』は、中国四大奇書(明の万暦年間、15731619年までに完成した長編小説の傑作、『水滸伝(すいこでん)』『三国志演義』『西遊記(さいゆうき)』『金瓶梅(きんぺいばい)』の総称)の一つで、14世紀に生きた羅貫中(らかんちゅう)(生没年不詳)が、『三国志』を元に民間講談を交えて創作した長編小説です。

題材にしている時代は『三国志』と同じですが、『三国志』が魏を中心とした史実をまとめているのに対して、『三国志演義』は蜀を中心に、現実とはかけ離れたエピソードが多く盛り込まれているのが特徴です。例えば、「官渡(かんと)の戦い」がほぼ史実通りなのに対して、映画にもなった「赤壁(せきへき)の戦い」は大幅にフィクションを交えて語られています。他にも、劉備(りゅうび)(玄徳(げんとく))・関羽(かんう)・張飛(ちょうひ)や諸葛亮(しょかつりょう)(孔明(こうめい))などの登場人物を魅力的に描くなど、読者をひきつける工夫が随所にちりばめられた作品です。

K915-108-037-081
『一魁隨筆(いっかいずいひつ)燕人張飛(えんひとちょうひ)』

一魁隨筆燕人張飛

「三国志」の英雄の一人張飛を描いた図。場面は長坂(ちょうはん)戦い。曹操の軍に追われる劉備軍の殿(しんがり)を務めた張飛は橋の上で「我は人張飛、誰か来たりて勝負を決せん」(燕は張飛の出身地である幽州涿(ゆうしゅうたくぐん)に昔あった国の名前)と叫びます。曹操の兵たちは張飛を恐れ誰も近づくことができず、無事劉備はこの危機を逃れます。張飛の武勇の一つとして語られる有名な場面です。

『一魁隨筆』は和漢の故事人物を描いたシリーズで13図が知られています。本シリーズとして「燕人張飛」以外に当館では「曽我十郎祐成(そがじゅうろうすけなり)曽我五郎時致(そがごろうときむね)」(曽我物語の兄弟)、「真田左衛門尉(さなださえもんのじょう)幸村(ゆきむら)」(真田幸村)を所蔵しています。

K915-108-037-030
『月百姿(つきひゃくし) 曹操南屏山昇月(そうそうなんびょうざんしょうげつ)』

月百姿曹操南屏山昇月

場面は赤壁の戦いの前夜。明日、自らが大敗を喫するなど思いもよらない魏(ぎ)王曹操は長江に浮かべた船中で酒宴を催し、舳先(へさき)に立ち出て歌を詠みました。

船首に立つ曹操の後ろ姿を描くことで、あたかも曹操と同じ船の上から彼方の南屏山にかかる月を見ているような感を抱かせています。

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団十郎(だんじゅうろう)の玄徳(げんとく)芝翫(しかん)関羽(かんう)

団十郎の玄徳と芝翫の関羽

魅力あふれる人物たちが活躍する「三国志」は、庶民の娯楽であった歌舞伎の人気演目でした。江戸時代から明治期の流行を写し取るメディアであった浮世絵には「三国志」を題材とした作品が多く残されています。

当館所蔵の浮世絵には、三国志の三大ヒーローである劉備(りゅうび)(玄徳(げんとく))関羽(かんう)張飛(ちょうひ)を、当時の歌舞伎スターたちが生き生きと演じている姿が描かれています。

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