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ごあいさつ

101年目の新たな一歩

 当館のホームページをご覧いただきありがとうございます。この度、静岡県立中央図書館の館長を拝命しました渡辺です。どうぞよろしくお願いいたします。

 1925年(大正14年)4月に静岡県立葵文庫としてスタートした当館は、幾度かの名称変更を経て、昨年度(2025年)、創立100周年を迎えました。これはひとえに、日頃から当館をご利用くださっている県民のみなさま、そして当館の設立や運営に携わってこられた多くの関係者の方々のおかげであり、改めて心より感謝申し上げます。

 創立100周年を迎えた昨年度は、新県立中央図書館の整備方針が、一旦見直されることになった年でもありました。県民のみなさまに御心配・御迷惑をお掛けしたことに対し、改めておわび申し上げます。今後、基本構想の改定に向けた検討が進められる予定ですが、引き続き、県民のみなさまの調査研究を支え、必要な資料収集・保存、県内の市町立図書館をつなぎ支援していくという県立図書館の役割を着実に果たしてまいります。そして、静岡県の「知の拠点」として、県民のみなさまの「調べる、考える、解決する」を全力で支えていきたいと考えています。

 先日、東京都心の一角にあるウクライナ語の本を集めた図書室についての新聞記事(令和8年3月5日及び同年3月16日付け静岡新聞DIGITAL Web)が目にとまりました。記事によれば、その図書室は、日本各地の被災地などで心ケアのボランティア活動を行ってきた団体が運営する施設の一室にあり、ウクライナ出身の女性の提案によって開設されたそうです

 彼女が日々伝わる母国での戦況に心を痛めながら集めた本は、当初の約50冊から、今では1,000冊ほどにまで増えました。そしてそれらは、祖国での戦禍を逃れ日本に避難する多くのウクライナの人々にとって、心のよりどころになっているということです。中には「故郷にいるような気持ちになる」と語る方や、好きだった本を見つけて「家族や友達と過ごした楽しい時間を思い出す」と声を詰まらせる方もおり、何度もこの図書室を訪れる人もいるようです。

 この図書室の開設を提案した女性が、「祖国の文化を守る」という思いから本を集めていることに加え、彼女が残した次の言葉が強く印象に残りました。

 「本は私たちの心です。」

 この言葉から、本が、人々に知識や情報を与えるだけのものにとどまるのではなく、自分の国の文化として誇りの対象となる存在であること、苦難の渦中にある人の心を支える力を持つ貴い存在であることが伝わってきます。

 そして、スマートフォンの普及などにより、本離れ・読書離れという言葉を耳にすることが多い現代において、「本は守らなければならない文化である」、「本は私たちの心である」という思いを大切にしながら図書室の運営に携わっている方がいることに、襟を正される思いがするとともに、平和な日本に住む私たちは果たしてそのような態度で本に向き合ってきたのかと、自らを振り返る契機ともなりました。

 本はまさに私たちの大切な文化であり、心そのものです。そのことを肝に銘じ、先人たちが長い年月をかけて積み重ねてきた文化や歴史、英知といったかけがえのない財産を守り、次代に確実に引き継いでいくとともに、それらをさらに発展させ、新しい文化を育み、静岡の未来を創り上げていく役割を果たしていきたいと思います。

 今後とも、県民のみなさまの御期待に応えられる図書館を目指し、職員一同、力を合わせて取り組んでまいります。101年目の新たな一歩に当たり、引き続き御理解と御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

令和8年4月

静岡県立中央図書館長 渡辺 賢一