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図書館員の棚から3冊(第129回)(2019/03/08)

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図書館員の棚から3冊(第129回)(2019/03/08)


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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第129回目は 吉田町立図書館 内山 知奈美 さん 水野 華奈 さん 関 ひなの さん です。■

 
1 『かがみの孤城』 
  (辻村 深月/著 ポプラ社 2017年


 「かがみの孤城」は2018年本屋大賞を受賞したことでも話題になりました。
 学校での居場所をなくしていた中学生・こころの目の前で鏡が光り、その光に飛び込むと、たどり着いたのは見知らぬお城。そこには、主人公を含めた7人の少年少女がいて、それぞれ学校にいけない事情を抱えています。7人を集めたお城の管理人「オオカミさま」はお城にある鍵を見つけた、たった1人の願いを叶えると7人に告げます・・・。鍵探しには期限とルールが定められていて、ミステリ要素も格別ですが、7人それぞれの事情も深く描かれています。
 繊細に描かれている痛いくらいの切実さと、張り巡らされた伏線が後半一気に回収されていく爽快感。なにより物語の着地点がとても感動的で忘れられない一冊です。
                                        (内山 知奈美)                                             

2 『魔王』 
  (伊坂 幸太郎/著 講談社 2005年


 「考えろ考えろ、マクガイバー。」(『魔王』より引用)
 ふとしたときに真似をするこのフレーズだけは、読後時間が経って内容を途切れ途切れにしか思い出せなくなっても絶対に忘れない。表題作『魔王』の主人公である安藤が、幼いころに観たテレビドラマの粗筋は全く覚えていないのに、そのドラマの主人公の『考えろ考えろ』という台詞だけはよく思い出すように。ちょうど私が、考えない人間から抜け出そうと必死にもがいているときに読んだせいかもしれない。
 舞台は現代日本。腐敗した無責任な政治への諦観とアメリカや中国に対する不満や反感、氾濫する真偽もわからない情報。現実では表面は変わっているように見えて、もう長いこと抱えたままのように思われる問題が詰め込まれている。
 そこに現れる怜悧で峻烈な政治家、犬養。中国が引き起こした環境汚染問題、アメリカ人による日本人サッカー選手の刺殺事件。若者を中心とした大衆は犬養に熱狂していき、アメリカに関連するものを対象とした無差別な暴動と暴力に走る。面白そうだから、他国に毅然とした態度で立ち向かってくれそうだから。舐められているのが我慢ならないから、犯人がしたとされる発言が悪びれもしない最低なものだったから。短絡的に、衝動的に、テレビとインターネットの情報だけを根拠に無意識に統一し、恐ろしい洪水となって荒れ狂う。
 安藤はその中で、考え続ける。犬養の思惑を、ひとつになっていく世の中の行く先を。そして危機感を抱き、物語の冒頭で偶然気付き、考察と実験を重ねた『ある能力』を使って対決に臨む。
 果たして、私たちは考えているのだろうか。考えているつもりで流されていないだろうか。洪水の流れの一部になっていないだろうか。考えろ考えろ。わからなくてもいいから、自分の頭で。
                                         (水野 華奈)

3 『カラフル』 
  (森 絵都/著 理論社 1998年


 生前の罪により輪廻(りんね)のサイクルからはずされ、魂としてさまよっていた『ぼく』は、天使プラプラの導きにより人間界で修行することになる。自殺を図った少年『小林真(まこと)』の体を借りて、自分の罪を思い出さなければならないと告げられるのだが…。
 私は小学生の時から何十冊と本を読んでいますが、その中でも特に気に入っている本の一つです。
 高校生の時に、そのシンプルな題名とストーリーに惹かれ購入しました。
 この本を読んで、誰しもが様々な感情も抱えて生きていることを知り、またその感情を豊かな色彩として表現していたのが印象的でした。
 数年ぶりに読み返して改めて驚いたのが、『ぼく』の口の悪さ!
 彼はある理由から『小林真』の家族、とりわけ母親にきつく当たります。また自分につきまとってくる同級生も冷たくあしらいます。
 そんな彼も悩み傷つきながら『小林真』として、生きる道を切り開いていきます。
中高生はもちろん、老若男女問わずおすすめの一冊です。
                                         (関 ひなの)

 
 次回は 川根本町文化会館図書室 鈴木 梢 さん 中神 志緒里 さん 原田 みどり さん です。

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