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名著・貴重書/江戸幕府旧蔵の和漢書
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(2)漢籍 1

AC2
『論語』
 慶長勅版といわれる貴重な版本である。慶長勅版とは、後陽成天皇(1586-1610 在位)の勅命によって上梓(じょうし)した版本をいう。当時朝鮮から伝来した銅活字に倣って大型の木活字を作らせ、慶長2年(1597)から8年(1603) まで『日本書紀神代巻』『古文孝経』など多くの書籍を上梓させた。 表紙には「古注論語素本全」と墨書され、表紙見返しに「慶長己亥刊行」という大型二行の堂々たる刊記がある。すなわち慶長4年 己亥〜つちのとい〜(1599) 『孟子』『中庸』などと共に摺刷されたもので版式雄大、印刷は濃墨鮮明、真に勅版の名にふさわしい。ただ、見返し、巻首部分に剥落箇所が若干みられることが惜しまれる。
 巻頭の印記「藕 (「さんずい」に「黄」) 精舎(ぐうこうしょうじゃ)」印は第十一代大学頭林復斎(はやし ふくさい)の、「弘前医官渋江氏蔵書記」印は徳川末期の儒医渋江抽斎(しぶえ ちゅうさい)の各蔵書印である。 因みに『弘文荘古活字版目録』(反町茂雄、昭和47年)には、AC2と全く同種の版本が650万円の売値で搭載されており、そこに「この種の伝本は極めて稀れで、このほかには近衛家陽明文庫と静岡県立図書館葵文庫に各一部珍蔵されているのみ」、と付言されている。
「論語」の「序」の部分
「論語」の「序」の部分

<参考文献>
    022.3−3
    『古活字版之研究』(川瀬一馬著 安田文庫、1937年)

 
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