原書は英国サンホルスト兵学校の教官マクドウガルの著した“The Theory of War”1862(『戦争論』)である。
本書は戦争の実例を理論的に分析した戦術書で、その内容は実践的な色合いが濃い。実戦の舞台となった戦地の地図を豊富に載せ、ナポレオンやフリードリッヒ2世の戦術も紹介している。
訳者の渡部一郎(温)(わたべ いちろう)(1837-1898)は、開成所の英語教授職並まで勤めた。幕府の倒れたあと、一時静岡に移り、明治元年、沼津兵学校が開設されるとそこの英学主任、一等教授並に任ぜられた。「無尽蔵之印」は、渡部の沼津時代の書斎名である。なお「箱館御役所」の印記より、この本は箱館奉行所の旧蔵であったことがわかる。
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