図書館員の棚から3冊(第111回)(2018/06/8)
|
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ |
■第111回目は 焼津市立図書館 守屋 綾子さん 鈴木 愛美さん 成岡 正子さん です。■ |
1 『ふしぎなおきゃく』 (肥田 美代子/作 岡本 颯子/絵 ひさかたチャイルド 2006年 職業柄、自分が子どもの頃に読んだ絵本に大人になってから再会する経験は数多くありますが、この絵本ほど、再会の瞬間に大きな衝撃を受けた本はありません。よく"雷に打たれたような"とか"電気が走ったような"という表現がありますが、大袈裟ではなくまさしくそのような感覚でした。なぜなら私はその大好きな絵本のことを、その瞬間まですっかり忘れていたのです。 けんさんは「とんちんけん」というラーメン屋さんの主人です。とんちんけんのラーメンは、おいしくてとても人気があります。この頃来るようになったおきゃくさんがラーメンを食べ残して帰っていくので、けんさんは気になってしまい…というおはなしです。 大好きで繰り返し読んだ絵本で、特にお気に入りのページを隅々まで飽きもせずずっと眺めていたものです。あれだけ好きだったのにすっかり忘れてしまうなんて、そして、表紙を見ただけでそれを思い出すことができるなんて、人の記憶って本当に不思議です。 なお、自分用にと書店に発注したところ、改訂版となっていました。届いた改訂版と初版を読み比べてみると…、布団の上に寝そべるけんさんの手から、煙がモクモクでる大人の嗜好品が消えていました。 (守屋 綾子) 2 『あいうえおの本』 (安野 光雅/作 福音館書店 1976年) ここにあるはずの本が見つからない。そんなときにはちょっと恨まれる書庫ですが、つい最近、記憶とつながる絵本が見つかりました。書庫、すばらしい。 急ぎの探しものではないのをいいことに、その本を手に取ります。表紙には、引き出しに一文字ずつ平仮名が書いてある、木製の薬棚。瓶に入った濁点と半濁点。…間違いありません。家にあったものと同じです。対象年齢は、幼児~おとなまで。 ページをめくります。左側に平仮名が一文字描かれています。まるで木で作ったかのような。そして右側には、その文字から始まるものの絵。例えば「う」は、うなぎと梅干し。大人はクスッとする組み合わせです。「た」はたいやき。「さ」は、サルと三輪車(しかも「さ」の文字だけはサクラ材というこだわりよう!)。このあたりは、幼い私も楽しく当てて読んだことでしょう。しかし問題は「ま」です。「ま」の絵だけを見て、大人になった私が名前を言ったなら「行燈」もしくは「走馬灯」です。…「ま」?「ま」…? よく見ると、文字と絵の周囲にも、額のふりをして関連する絵がたくさん描かれています。「マンボウ」「松ぼっくり」「巻き尺」「孫の手」…。で、結局真ん中のこの絵は何なのでしょう。 答えは、「このほんにでてくるもののてびき」として、終わりの方に書いてあります。大人は耐え切れず見てしまいますよね。幼い私に尋ねられた母は、どう答えたのでしょう。「てびき」も見たはずです、大人ですからね。そのまま教えてもらったのでしょうか…残念ながら思い出せません。そしてもっと残念なことに、大人の私も知らない言葉でした。 「まわりどうろう」って! (鈴木 愛美) |
3 『おしいれのぼうけん』 (ふるた たるひ/さく たばた せいいち/[画] 童心社 1974年) さとしとあきらが通う保育園では、決まりを守らず、先生から注意されてもきちんとできない子は、なんと押入れに入れられ反省するまで出してもらえません。ある日、二人が押入れに入れられたとき、暗い闇の中から「ねずみばあさん」が何千匹ものねずみを引き連れて現れ、二人をねずみに食べさせると言うのです!でも、黙って言いなりになる二人ではありません。そこから冒険が始まり・・・。自分が子どもの頃には、モノクロで描かれている「ねずみばあさん」の眼力がとても怖く、本に対し嫌な印象を持っていました。数十年後に改めて本に出会い読んでみた時、スピード感のある冒険と生き生きとした子どもの姿に、印象が正反対になったのを覚えています。出版年はかなり前ですが、物語にのめり込ませる力を持ち、魅力があせない本なのでお勧めします。 (成岡 正子) |
次回は 牧之原市立図書館 小磯 栄美 さん、 松浦 彩 さん、池ヶ谷 則子 さん です。 |