図書館員の棚から3冊(第96回)(2017/10/27)
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■第96回目は 浜松市立中央図書館の 吉田 佐織 さん です。■1 『おしいれのぼうけん』 (ふるたたるひ/さく たばたせいいち/画 童心社 1980年) 初めて『自分の本』として意識したのがこの「おしいれのぼうけん」。 幼稚園を卒園するときに、先生からプレゼントしていただいた思い出の本です。何度も繰り返し読んだことを覚えています。 みずのせんせいにおこられて、みんなが怖いと思っている押し入れに閉じ込められたあきらとさとしが繰り広げる冒険のおはなしです。 今回、改めて読み直してみて、いかにその後の自分の感じ方や本の好みに強い影響を受けていたかよく分かりました。 ずっと押し入れや天井の木目が怖かったのも、「ナルニア国物語」など日常がどこか別の場所につながっている物語が大好きになったのも、全部この本がきっかけだったのかもしれません。私の大切な1冊です。 2 『霧のむこうのふしぎな町』 (柏葉幸子/著 竹川功三郎/絵 講談社 1970年) 小学生の頃、学校の図書室がお気に入りでした。いつも、夕方になって「そろそろ帰りなさ~い」と追い出されるまでいたことを懐かしく思い出します。 当時のお気に入りの本はたくさんありますが、特に気に入っていた一つがこの本です。 私が今でも傘や日傘を買うのが好きなのは、この本に出ていた柄(え)にピエロのついた傘に憧れていたからかもしれません。 小学生の私は、ジョンが作る料理やトケのお店のはちみつパイやにじのキャンデーに心惹かれていましたが、図書館に勤めるようになった今なら、ターナの『図書館のにおいのする本屋』に行ってみたいと思います。 大人になって読み返しても、どこかにピコット屋敷があるような気がしてしまう不思議な魅力のある本です。 新しい版の本はイラストが替わっているようですが、ぜひ、講談社のハードカバーのイラストのものを読んでみてください。 3 『はてしない物語』 (ミヒャエル・エンデ/作 岩波書店 1982年) 「布張りの本はなんてきれい…」と思った最初の本。子どもの私には、とっても特別感があって、光沢のあるあかがね色の本を何度もさわってみた記憶があります。印刷も凝っていてあかがね色とみどりで印刷された物語は、いつみてもわくわくします。 現在は上下2巻の岩波少年文庫版も発行されて読みやすくなっていますが、私にとってはこの布張りの本が「はてしない物語」です。 物語のなかの「けれどもこれは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしよう。」というフレーズを信じていて、いったいつになったら続のお話が読めるのかなと、わくわくしました。大きくなって、きっとエンデは続のお話を書くつもりだったわけではないということに気が付いた後でも、エンデが1995年に亡くなった時に、これでもう『はてしない物語』の続きのお話は永遠に読めないのかと思って残念に思いました。 きっとそんなふうに思った方は、私以外にもたくさんいるのではないでしょうか。 エンデ作品では、「鏡のなかの鏡-迷宮-」もおすすめです。 次回は 熱海市立図書館の 望月則孝 さん、井上将来さん、矢田沙織さん です。 |