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図書館員の棚から3冊(第78回)(2017/01/27)


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図書館員の棚から3冊(第78回)(2017/01/27)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第78回目は 伊豆の国市立中央図書館の皆さん です。■

児童書、YA、一般書 それぞれ一冊ずつ紹介させていただきます。

1 『まゆとおに-やまんばのむすめ まゆのおはなし』(児童)
  (富安陽子/文 降矢なな/絵 福音館書店 2004年)
 この季節に読み聞かせでよく読ませていただく絵本を紹介します。
 まゆはとってもかわいくてチャーミングな女の子。でも、普通の女の子ではありません。やまんばの娘だけあって、たいへんな力持ちです!
 ある日、鬼がまゆを見つけると、「とってもおいしそうだから食べてやろう」と思います。やさしく声をかけてうちへ連れて行きますが、「薪を集めて」と頼むと、太い松の木を1本引っこ抜く。「火を囲う石ころを集めて」と頼むと、いわやを蹴っ飛ばし、大きな岩を抱え上げる。鬼はびっくりしてしまいます。 
 いよいよ鍋に入れたお湯が沸き、まゆを食べてやろうとしたとき、まゆの礼儀正しい行動によって、鬼は、おしりに“おおやけど”をしてしまいます!いったいどんなことが起こったのでしょうか?
 そして、最後には、まゆとおにはとっても仲良しになります。
 節分の近づくこの時期に、こんな「鬼」と「まゆ」のおはなしはいかがですか?
                  (伊豆の国市立中央図書館 高橋伸枝)

2 『エヴァが目ざめるとき』(YA)
  (ピーター・ディッキンソン/作 唐沢則幸/訳 徳間書店 1994年)
 この物語は、事故にあった13歳の美しい少女エヴァが、長い昏睡状態のあと目ざめるところから始まります。“なにかがおかしい…。”何度かの目ざめを繰り返すうちに、自分が黒い毛におおわれたチンパンジーの体になってしまっていることを知るのです。読むにつれ、私の頭の中にも話の舞台である近未来の地球や森が、色濃く浮かびあがり空気の密度さえ伝わってきて、途中で本を置くことができません。そしてこのユニークな設定の話を読み終えると、一人の少女が自分の新しい世界を受け入れ生き抜いた様が心に残ります。それは、愛する親や周囲の期待に反していても、いきたい道を歩んでいくんだという気持ちを私に与えてくれました。エヴァがエヴァであったように。
                  (伊豆の国市立中央図書館 増島佐和子)

3 『僕とおじさんの朝ごはん』(一般) 
  (桂望実/著 中央公論新社 2015年)
 おいしいものを食べるのが大好きです。小説も、おいしいものが出てきて幸せな気持ちになるものがたくさんあります。
 でも、この本は、切なくて複雑な読後感でした。
 主人公は“僕”ではなく“おじさん”です。「面倒くさい」が口癖で、料理もいかに手を抜くかしか考えていないケータリング業者の水島。人との深いつきあいも避けていたのに、腰痛のリハビリに通う病院で出会った十三歳の英樹と関わるうちにその姿勢が変わっていきます。
 病気のため人生のほとんどを病院で過ごす英樹は、次の手術を拒否し、「僕の命は僕のものだ」「どこにも行けず何も体験できない生活をこれからもずっと続けろと言うの?」と主張し、両親はそんな息子の考えを知って傷つき、水島に説得を託します。
 病気の当人と、残される家族、両方を思う水島は、悩みながらも、英樹の“最後の晩餐”のリクエストに応えてトーストと目玉焼きの朝ごはんを作ります。端から端まできれいに焼けた最高のトーストを。
 考えてもなかなか答えの出ない問題は多いのですが、おいしいものを心を込めて作ることも、食べることも、日々の中で感謝し、大切にしたいと思った1冊です。
                  (伊豆の国市立中央図書館 中山 操)


                  次回は 静岡市立中央図書館 利國 陽二郎 さん です。

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