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図書館員の棚から3冊(第74回)(2016/11/25)


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図書館員の棚から3冊(第74回)(2016/11/25)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第74回目は 御殿場市立図書館の皆さん です。■


1 『本日は、お日柄もよく』 (原田マハ/著 徳間書店 2010年8月)

「言葉のチカラ」に魅せられ、心から感動した本です。
『困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。』-この言葉がとても心に残りました。
ストーリーは、OL 二ノ宮こと葉が幼馴染の結婚式で出会った“伝説のスピーチライター”に弟子入りし、いつの間にか政権交代を掲げる野党のスピーチライターとして活躍し、自らの運命まで変えていくお仕事小説です。
原田マハさんのとても優しく読みやすい文章に引き込まれました。読み終えた時、とても爽やかで前向きな気持ちになり、今まで以上に、言葉を大切にしたいと思いました。
人の心に響く言葉、相手に伝えたい思いを「まっすぐに」届ける言葉。
言葉の威力に驚かされる一冊です。
                           (御殿場市立図書館 土屋基恵)



2 『となりのたぬき』 (せなけいこ作・絵 鈴木出版 1996年9月)
自分が相手を嫌っていたら、相手も自分の事を嫌ってしまう。当たり前の事ですけど、分かってはいても、それを改めるのはなかなか難しい事ですよね。
この絵本の主人公のうさぎは、となりのたぬきが嫌いです。当然、たぬきもうさぎが嫌いで、ケンカばかりしています。「あのたぬき、ぽかぽかになぐってこぶだらけにしたい!ぺちゃんこにしておせんべにしたい!どこかとおくへぶっとばしたい!」等と、絵本とは思えないような、なかなかに過激な事まで口にしています。それを聞いていたお月様がうさぎに一つの提案をします。
それは、たぬきをやっつけてあげるから、一か月の間、たぬきにうんと親切にしてあげる事。次の日からうさぎは変わりました。たぬきにとっても親切になったのです。たぬきはそんな事はもちろん知りません。けれども、次第にうさぎに対して優しくなっていきます。
そして、周囲に「あのうさぎはほんとはいいやつなんだ」と言うようになるまでに。
そして、一か月が経ちました。このお話の最後で、この後にうさぎとたぬきがどうなったのか、説明はありません。けれでも、絵本の裏表紙でそれを想像できるような作りになっています。読後のお子様と感想を述べ合ったりするのも楽しいかもしれませんね。
                           御殿場市立図書館 船本一也)  



3 『ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭(ポプラの木かげ)』

(村山早紀/作 朝倉めぐみ/絵 ポプラ社 200112月)
単行本版(ポプラの木かげ)『ささやかな魔法の物語』は、私が世界で一番好きな本です。個人的に所蔵している本は、なんと著者村山早紀さんのサイン入り!この本に出合ったのは小学校高学年のころ。今の私は25歳。10年以上もの間、私の心を温かく包み支えてくれています。これからもそうあり続けると思います。
小学校高学年の頃の私は、ファンタジーが好きでした。特に村山早紀さんのお話はお気に入り。そんなときに「『ささやかな魔法の物語』すごく良かったよ」と言われワクワクしながら図書館へ借りに行きました。まず、表紙を見た瞬間に「なんて素敵…」と思いました。内容を読まずにパラパラとページをめくって、2種類の書体を使い分けて上品に印刷されているページ及び挿絵に感動。当時はこんな言葉は浮かんでいませんでしたが、丁寧に心を込めて作られた美術作品を見ている気持ちに近かったでしょう。その内容は、見た目と同様に優しく繊細で素敵に上品なものでした。かもめ亭のマスターをはじめとして、登場する大人たちの優しさに心がポカポカしました。
しかし、この本に惹かれたのはただ優しいだけのお話ではなかったからです。当時感じていた、でも自分の言葉では言い表せない現実世界での息苦しさが書かれているように思ったのです。
学校で壮絶ないじめを受けた少女は鏡の世界に逃げ込んでしまう。クラスに適応できなかった少女も元の学校に戻ることはできなかった。死ぬ定めにあった人が生きていることはない。当時、児童書と言えばドキドキワクワクの楽しいお話、途中苦難があっても最終的には主人公たちは幸せになって終わる。そう思っていた私にとって、心に重く沈んでくるようなストーリーにショックを受けたと同時に共感する部分がいっぱいでした。
暖かさと痛み、不思議な要素の中にある現実。心の傷を癒す優しさと心に刺さる苦さを併せ持っているところが、ミルクと砂糖をたっぷり入れたちょっと苦味を感じる温かいカフェ・オレみたいというのは大人になってからの感想ですが…。

あの頃より成長した今の私は寂しい気持ちを抱えた子どもに寄り添える心を持てているか、表紙を見て、お話を読んで自分に問いかけます。
そして今でも、苦しいこと・辛いことがあるときに自分の心を温めるために本を開いています。
                          (御殿場市立図書館 長田 結希)  



            次回は 浜松市立都田図書館の皆さん です。 

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