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図書館員の棚から3冊(第58回)(2016/03/11)


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図書館員の棚から3冊(第58回)(2016/03/11)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第58回目は 静岡県総合教育センターあすなろ図書室 掛下 和香江 さん です。■

 
1.『おおかみと七ひきのこやぎ』
(グリム童話 フェリクス・ホフマン/絵 せた ていじ/訳 福音館書店 1967年)

 このお話は私が子どもの頃、祖母の家に泊まりに行くと、必ず布団に入りながら語ってくれた大好きなお話でした。絵本があると知ったのは大人になってからで、懐かしく感じ、手に取りました。絵本は幼い頃の私が想像した世界を再現してくれました。協力しておおかみを追い返そうとする七ひきの子やぎの兄弟、ずる賢いおおかみが粉で白くした前足、荒らされた家に帰ってきたお母さんやぎの悲しそうな顔。ちょっと怖いけど続きが気になる、わくわくした気持ちがよみがえりました。
 大人になってからよく考えながら読むと、けっこうひどい仕返しをしたんだなと感じますが、丸のみにされた子やぎたちが無傷で助かり、代わりに石を詰められたおおかみが「お腹がごろごろする」なんて言いながらひどい目にあう場面が子どもの頃の私には痛快でした。日本の昔ばなしにも勧善懲悪のお話が多いので親しみやすいストーリーだったのかもしれません。日本でも長く愛されている絵本です。

 
2.『腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿』
(西澤保彦/著 実業之日本社 2005年)


 「事件簿」というからにはミステリーなのですが、一風変わったお話です。というのも、主人公は探偵ではなく市民サーヴィス課出張所の市の職員なのです。彼がまたステレオタイプな公務員で、ワイシャツに黒い腕貫をしており、ニコリともしない無愛想さ、他に誰もいないのに「順番待ちリストに記入してお待ちください」と律儀に案内する、そんな人物です。市民サーヴィス課の「ヴィ」にもなんだか哀愁を感じてしまいました。
 神出鬼没な市民サーヴィス課出張所は、あるときは大学の事務室内、あるときは大学病院の待合室に・・・様々な場所に現れます。相談する気なんてさらさらなかった人たちが、なぜだか話し込んでしまい、その話を聞いた腕貫探偵が現場を見ていないのにもかかわらず淡々と事件を解決してくれます。普通のミステリーのようなハラハラする場面はないのに、いつの間にか引き込まれて読んでしまいました。映像化してくれないかなあと期待している1冊です。
 

3.『ぶたぶたと秘密のアップルパイ』 (矢崎在美/著 光文社 2007年)

 私はファンタジーが好きでよく読みますが、この本は現実になってほしい物語ナンバー1です。バレーボールくらいの大きさで黒いビーズの目を持つピンク色のぶたのぬいぐるみの「ぶたぶたさん」。ぶたぶたさんはぬいぐるみでありながら、ちゃんと自分で日常生活をおくることができ、どんな仕事も器用にこなし、なんと驚くことに妻子を持っているという中年男性です。彼の礼儀正しさと見た目のかわいさに、どんな人でも心を開いてしまいます。
 ぶたぶたさんシリーズとして何冊もの本が出ていますが、私はこの本が一番好きです。会員制のカフェが舞台となっていて、秘密基地のようなわくわく感があり、ぶたぶたさんが淹れてくれたコーヒーから湯気が立ち上がり、ナイフを入れたアップルパイからカスタードが流れ出てくる様子がはっきりとイメージできるからです。まるで自分がぶたぶたさんのカフェを訪れたように思えます。心が温まり、たくさん登場するおいしそうな食べ物にお腹も満たされる物語です。いつかぶたぶたさんに出会える日が来ないかと夢見ています。


         次回は 富士市立東図書館 山口 進 さんです。 


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