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図書館員の棚から3冊(第57回)(2016/02/26)


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図書館員の棚から3冊(第57回)(2016/02/26)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第57回目は 静岡県立中央図書館 三枝 春奈 さん です。■

  こんにちは、静岡県立中央図書館の三枝です。
 このお話をいただいた時、積読ばかりの私が何を紹介しようかと悩みましたが、今回は、あまり読書をしていない友人に、紹介した三冊を上げようと思います。

1.『バムとケロのさむいあさ』 島田ゆか/作・絵 文渓社 1996年

 この本は、ちいさなお子さんがいる方から勧められた絵本です。
 お子さんが『バムとケロ』のシリーズの中でもこの本が特に気に入っているとのことで、私も書店に行き、絵本を広げて一目ぼれ、シリーズまとめ買いをしてしまいました。
 「バム」(イヌ)と「ケロ」(カエル)はひとつの家に住んでいます。ある朝、起きるととても寒かったので、朝食後に裏の池でスケートと釣りをしようと支度をして出かけていくと、「カイちゃん」(アヒル)が凍った池で動けなくなっていました。夜、天体観測(カイちゃんの趣味)をして凍り付いてしまったのです。バムとケロは急いで氷を切り、カイちゃんを家に連れて帰り、お風呂に入れ、温かい食事をします。ケロちゃんはカイちゃんを気にいって遊びに誘い、家の中はとんでもないことに…。3人(匹)は、遊び疲れて寝てしまい、気が付くと朝でした。起きるとカイちゃんいなくなっていて、ケロちゃんが悲しむので池に行ってみると…。
 作者が海外在住のためなのか、色の使い方が原色の組み合せで描かれていて、家具なども洋風な感じがします。絵本には、主人公の他に小さな犬やうさぎなども出てきますが、その子たちにもそれぞれ名前がついています。
身の回りのものも「バム」なら犬、「ケロ」ならカエルの形になっていて、ストーリーだけでなく、小物ひとつ見ても楽しい絵本です。
 
 
2.『風の中のマリア』 百田尚樹/著 講談社文庫 2011年(講談社 2009年)
 
 百田尚樹さんの本を読んだことがない中、何か1冊と思い手に取った本です。
最近は、歴史大河小説を書いている印象が強い百田さんですが、この本の主人公はオオスズメバチです。

 初秋に生まれたオオスズメバチのワーカー「マリア」は、“疾風のマリア”と呼ばれる程のハンターとなり、少し前に生まれた姉たち(ワーカーは全てメス)と共に獲物を捕り、幼い妹たちに運んでいた。その頃オオスズメバチの巣は、急速に拡大し、生まれる幼虫が増えていく。そして「偉大なる母」である女王蜂は、次代の女王蜂となる卵とともにオスの卵を生み始める。ひとつのオオスズメバチの巣の衰退と次代の女王の巣立ちが描かれている。
 一匹の擬人化したオオスズメバチの戦士「マリア」の視点で、野山の自然や昆虫たちの生態、オオスズメバチの闘いが描かれています。途中、女王蜂が自分の生まれから巣を大きくするまでの苦労が語られ、全体を通して1代のオオスズメバチの生態がよくわかる一冊です。


3.『風が強く吹いている』 三浦しをん/著 新潮社 2006年
 
 お正月の恒例の「箱根駅伝」。毎年欠かさずなぜかテレビを見てしまう「箱根駅伝」が小説になるとどうなるのだろうと、思わず手に取ってしまった本です。

寛政大学4年の清瀬灰二(ハイジ)は、ある日万引き犯を自転車で追いかけ、犯人の走りに目を付けた。その犯人は、自分が通う大学に入学する蔵原走(カケル)であった。住むところがないという走を自分の住む竹青荘に誘う。9部屋の竹青荘に10人の住人。灰二は、4年間温めていた考えを実行に移す。
竹青荘の歓迎会で全員を集め「この10人で箱根駅伝を目指そう」と。無理だ、気が違ったのかと騒ぐ中、竹青荘の寛政大学陸上競技部錬成所と書かれた看板を見せ、竹青荘に入ると同時に陸上部員となり、関東陸連に登録されている事実を伝える。
 翌朝からの早朝練習をはじめ、日々の練習、記録会への参加、夏の合宿、予選会を経て箱根駅伝出場と各々の力走。怒涛の9か月が描かれている。

 個性的な面々(中には陸上経験がない者も)が、練習に明け暮れ、大会に出場し、ぶつかり合い、仲直りし、箱根駅伝出場を目指す。その中で成長していく姿が、箱根での各々の走りの中に集約されています。箱根駅伝をテレビや沿道で見るのとは逆に走者からの視点でみる沿道も描かれとても面白い小説です。


 次回は 静岡県総合教育センターあすなろ図書室 掛下 和江 さんです。 


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