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図書館員の棚から3冊(第48回)(2015/10/09)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第48回目は 元南伊豆町立図書館協議委員で 石垣りん文学記念室の設立に携わられた 鈴木 さつき さん です。■


~石垣りんの詩集をよんで~

1.『表札など』(2000年/童話屋出版社)
2.『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』(2000年/童話屋出版社)
3.『略歴』(2000年/童話屋出版社)
4.『ユーモアの鎖国』(1973年/北洋社)


 人との出会い、本との出会いは人生を変える。
「石垣りん」この人の詩を読むことはこの人を知ることである。この人を知ることはこの人と出会うことでもある。もちろんこの世に存在しない過去の人ではあるが、ついこの間(平成17年)まで生きて居た人である。大正の9年に生まれ昭和と平成を駆け抜けて生きた。
 昭和といえばなんといっても戦争の歴史である。8月の終戦記念日を迎えて、戦争のただなかにあった人は様々な思いを胸に抱いていることであろう。りんは戦争のなかにあって其の悲しみや矛盾を詩にあらわした。
 私がりんを知ったのは戦後である。反戦の詩人として国語の教科書に載ったのである。おそらく(私の前にある鍋とお釜と燃える火と)であったような気がする。鍋とお釜は生活に密着した、無くてはならない道具である。然し、同じ鍋でもお釜でも、昭和の初めのものと今とではイメージも実際も違う。詩の中のお釜は羽のついたかまどで炊く重いふたを乗せたものである。そのころの女はかまどの周りをはいずりまわって飯を炊いた。

 「おいもや肉をりょうりするように
  深い思いを込めて
  政治や経済や文学も勉強しようと」

 と、詩には書いてあるけれど、当時の世の中の母親たちはそれどころではなかった。だからこそ、りんは女性の地位と自立をねがっていたのかもしれない。
 戦争が始まったのは昭和16年12月8日であるからりんは21歳の時である。だから彼女の青春はほとんど戦争によって打ち砕かれたと言ってもいいのではないだろうか、
 それでも彼女は日本興行銀行に勤めながら、そこで『女子文苑』、『断層』などに詩を発表し続けた。多くの人に詩を読まれることは詩を作る励みにもなり、彼女を成長させたはずである。きっとそこで師となる人や詩友を多く知ったことだろう。
 彼女が多くの人に知られるようになったのは戦後であろうけれど、生活の苦しい詩が多い。それは彼女の日常が過酷であったからで楽しい詩は少ない。心地よく口ずさむ詩ではない。けれど彼女の詩には真実があり優しさがあり、隠れたユーモアもある。優しさがあるから多くの人が彼女を慕うのだろう。辛い時、慰められる心の広さ、それはおそらく複雑な家庭環境にあって家族を支えてきた抱擁力と何事にもめげない忍耐力があったからだろう。
 石垣りん、この人の後にも先にもこの人に続くような人は現れないような気がする。
 逆境にあってもそれに負けず、現実を見据えてじっと耐える。それは退廃の詩ではない。どんなときにも、太陽に向かってほほ笑んでいる。大輪のヒマワリのようだ。笑顔の美しい詩人である。この人を知ること出会うことは自分の人生を充実させることである。

 
                 次回は浜松市立中央図書館 柳川 友香 さん  です。 

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