本文へジャンプ
静岡県立中央図書館 
読み上げソフト用ページひらがなのページForeign languageサイトマップ
文字を小さくする標準に戻す文字を大きくする
文字の大きさ
簡単検索

ヘルプ
ホームご利用案内お知らせ交通案内

現在位置:HOMEの中のメールマガジンから図書館員の棚から3冊(第45回)(2015/08/28)

図書館員の棚から3冊(第45回)(2015/08/28)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

■第45回目は 静岡県立中央図書館 所 康俊 さん です。■

1.『前を歩く人―坦庵公との一日―』小長谷建夫(第17回伊豆文学賞優秀作品集) 
(伊豆文学フェスティバル実行委員会/編 羽衣出版  2015年3月刊)


 「近代日本の産業革命遺産」として世界遺産となった韮山反射炉。実際に稼働して現存する唯一の反射炉遺構であるとか、建造したのが幕末の韮山代官、江川担庵こと江川太郎左衛門英龍なる人物で、江戸品川のお台場(砲台場)をつくるなどした隠れた偉人だとか、このたびの登録アピールを機に知ったという方が県内でも多いのではと思います。私自身もその一人でした。
 本作品は、静岡県内の題材による文学コンテスト「伊豆文学賞」の第17回最優秀賞受賞小説です。米捕鯨船に救助されアメリカ事情や西洋技術に通じて帰国し配下となったジョン万次郎が、幕末に先見の知性を国政に役立てようとする江川坦庵の心情を察して語る、という意外な構造で興味深い時代小説です。多く史実に基づきつつ、中には大胆な設定もあって楽しく読みながら、解説として知ることがほとんどだった担庵公の人となりが具体的な人物像としてイメージできました。また、韮山、大仁(おおひと)、大場(だいば)など、伊豆ならではの地名も豊富に登場して楽しめる地域文学でもあります。

 
2.『裸足と貝殻』集英社文庫 (三木 卓/著 集英社 2005年6月刊)

 70年前の敗戦後、中国から引き揚げてきた主人公の豊三少年と家族が静岡市に落ち着き、豊三は小・中学校時代を静岡で過ごします。少年が自らを復元していった過程が、戦後の時代の流れと重ね合わせて描かれる作者の自伝的長篇です。空襲から急速に復興する静岡、そして当時の静岡での暮らしぶりや様々な出来事が、豊三の少年らしい目を通して描かれていて、当時の世相が理解できました。
 第51回読売文学賞を受賞した本作品は三部作の二作目です。この前には、敗戦から引揚船に乗船する前までを描いた短編集『砲撃のあとで』があり、想像も及ばなかった満州での生活や日本への引揚げの困難かつ壮絶とも言える状況には衝撃を受けました。また、続編『柴笛と地図』では主人公豊三の高校入学以降の話で、当時の学生の姿や思い、現在に至る戦後社会の変化が実感できました。

 
3.『夜なかのひるま』(吉田とし/作、池田竜雄/絵 理論社 1975年刊)

 小学校の中学年の頃、親に連れて行ってもらった書店で何か選びなさいと言われ「タイトル買い」で書架から選んだ場面をなぜか覚えています。何だこの題名? それが、夜眠っている間に見る夢の話とわかって納得しつつ、昼間の出来事を書いた日記と、昼間の経験や気分の影響で見ていると思われる夢との、関連しているけれど現実ではあり得ない飛躍が楽しく、夢そのものの不思議さへの興味とも重なって話の展開にとても引き込まれました。友だちとふざけあったり、苦手なことに悩んだりする主人公たちの言葉も思いが、どうしてこんなに自分と近いんだろうと感嘆し、何度読み返しても笑いが抑えられず、これほど笑わせてもらった本はありませんでした。
 作者が静岡県(富士市)出身で、たくさんの名作を残して早世されたこと、この本も絶版になっていたことなどずっと知らずに、帰省するたびに実家の本棚に存在を確かめていました。この話の後でやっぱり笑えて仕方がなかった作品が漱石の『夢十夜』だったことも、真面目くさってとんでもない滑稽さを見せる夢というものの特性のためではと思わされます。


  次回は 湖西市立中央図書館 兵藤 友美 さん と 湖西市立新居図書館 
  鈴木 康典 さん です。 

図書館員の棚から3冊へ戻る     

   静岡県立中央図書館
   
   所在地 : 〒422-8002 静岡市駿河区谷田53-1
   電話 : 054-262-1242(代表)
    FAX : 054-264-4268
     
     
著作権・リンク等について

お問い合わせ
携帯サイト
http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/m/
QRコード
Copyright (c) Shizuoka Prefectural Central Library All Rights Reserved.