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図書館員の棚から3冊(第39回)(2015/04/10)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画をご紹介します。
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■第39回目は 元掛川市立大東図書館 浅山 愛美 さん です。■

 
 「家族」をテーマに3冊紹介します。

 1.『あかちゃんでておいで!』
(マヌシュキン/さく ヒムラー/え まつながふみこ/やく 偕成社 1977年1月)
 白黒の大人っぽいペン画で、子ども受けするようなかわいらしいものではないのに、幼い私はこの本が大好きでした。きっと、お母さんのお腹にいるあかちゃんの様子が見えているところが気に入ったのだと思います。
 このあかちゃんは、お母さんの心地良いお腹から出てくるのを嫌がっています。それを知ったお母さんは困って家族に相談します。
 おにいさんとおねえさんは、「あかちゃんがでてきたくなるようにしてあげるよ」と言って、お腹のあかちゃんに出てくるように怒鳴ったり、メダルでつってみたりしますが上手くいきません。
 おばあちゃんが、ケーキを焼いてあげると言っても、おじいちゃんがドライブに連れて行ってあげると言ってもダメ。みんなは、ほとほと困ってしまいます。すると、そこにお父さんが帰ってきて、いつものように家族みんなにただいまのキスをします。お父さんはお母さんのお腹にもキスをします。お腹のあかちゃんには、それがどんなものだかわかりません。「でてこなきゃわかりっこないさ」というお父さんの一言で、あんなに出てくるのを嫌がっていたあかちゃんが、急いで出てこようとします。
 無事に生まれてきたあかちゃん、家族みんなにキスをしてもらっている満足気な表情に誕生の喜びと家族の愛が溢れています。


 2.『ともだちは実はひとりだけなんです』
(平岡あみ/短歌 穂村 弘/解説 宇野安喜良/絵 ビリケン出版 2011年9月)
 平岡あみさんが12歳~16歳のころに詠んだ短歌集です。母親と暮らしている彼女が、時々会う父親のことや思春期の複雑な心模様などを実に冷静に詠んでいます。
 離れて暮らす父親に対し、
 「父はいない生きているけど父はいないうそなんだけど父はいない」と、寂しさと拒絶をない交ぜにしたような歌があるかと思えば、
 「父親はあれでいいのかネックレスつけて会社に行ってるようだ」と、まるで母親や姉であるかのように父親の身なりを心配する歌もあります。
 「荻窪の空手道場の前で今週もまた父が待ち伏せ」では、娘を想う父親の行動に対してうざったくも嬉しくもある彼女の気持ちが表れています。
 共に暮らす母親に対しては、父親よりも密接していて、
「支え合い母とふたりで暮らしてるこのごろ母をつぶしそうだ」と、自分の言動により母親への負担が大きくなってきていることを自覚しているような歌があります。
 しかし、一方では
「朝顔のように支えはもういらないそれからのことは自分で決める」では、母親からの解放を願っているようにも思えます。
 こうしてみていると、母子が難しい関係にあるのでは?と思えてきそうですが、
「母親はランク外のとこにいるともだちや彼とくらべられない」を目にすれば、そんな心配は要らぬことだったと納得できると思います。
 ほかにも、祖父母やともだち、恋人に対する歌が詠まれていますが、
「さみしさをがまんしなければと思う冷たい肉まん食べるように」
「思いっきり雪の上を走りたい首輪をはずされた犬のように」
「きょうだいが多いひとと結婚し子供にいとこつくってあげる」からは、彼女の置かれた状況に対する寂しさや責任が感じられます。
 彼女の歌の魅力は、随分とませたようなものと、ほんの小さな子どものダダのようなものがミックスされている点にあると思います。淡々としているように見えますが、その奥には家族への愛がしっかりと感じられます。


3.『おじいちゃん』
 (マーク・ジュリー/写真・文 ダン・ジュリー/写真 
重兼裕子/訳 春秋社 1990年4月) 

 81歳のフランクおじいちゃんは、歳をとって物忘れが増えてきて、少しずつ自分の身の回りのことができなくなってきます。状態は日増しに悪化し、家族はお医者さんに相談します。しかし、窮地を救ってくれるような答えはありません。もし、施設に入所させることになっても、徘徊癖のあるおじいちゃんの場合、縛って“おとなしく”させられることもあるというのです。多額の費用も必要です。
 家族が集まって、今後のことを相談しようとしているとき、おじいちゃんは自ら入れ歯を外し、もう何も食べないことを宣言します。おじいちゃんの決意は固く、水分もほとんど摂らず日に日に弱っていきます。おじいちゃんに少しでも長く生きてほしいと願う家族は、根気強く食べ物や飲み物を運びますが、おじいちゃんは頑なに拒否します。おじいちゃんを想っての行為が、かえっておじいちゃんを苦しめることになっていると気づいた家族は、様々な葛藤を抱きつつ大好きなおじいちゃんのため、彼の意思を尊重することに決めます。
 この本は、老化により変化していくおじいちゃんと、それを見守る家族の様子が写真と文章で綴られています。写真も文章も孫のマークとダンによるものなので、家族しか知り得ない繊細で微妙な部分まで記録されています。
 介護には時間とお金、そして体力も必要です。しかし、一番家族を苦しめるのは、愛する家族を失いかけているという心の状態なのではないかと思います。1分でも1秒でも長く生きてほしいと願う相手に対して、時に命を縮めることになっても本人の意思を尊重することが愛である場合もあるのだと感じました。
 日本では、独居老人や老老介護の問題が深刻になってきていますが、この本には理想の家族としてのひとつの形があると思います。
 家族が家族の最期をしっかりと看取る、看取ってもらえるというのは、どちら側に立っても何より幸福なことなのだと思います。

        
次回は静岡県立中央図書館 青木 俊明 さん です。

※静岡県立中央図書館のシステム更新に伴い、4月第4週、5月第1週のメルマガはお休みします。次回の配信は5月22日です。
 

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