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図書館員の棚から3冊(第31回)


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図書館員の棚から3冊(第31回)

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 図書館員の本棚拝見!
 このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画をご紹介します。
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■第30回目は 磐田市立竜洋図書館 星井 とし子 さん です。


1.『読む力は生きる力』(脇 明子/著 岩波書店2005年)

 私は児童図書の担当が長く、幼稚園、保育園、小学校などで読み聞かせの大切さや読書の大切さをお話してほしいと依頼されることがあるのですが、お話をする前に必ず一度は目を通すのがこの本です。
 この本と同じテーマの脇明子さんの講演会も参加させてもらったのですが、本当のうなずけることばかりでした。この本の中に「子どもが難題だらけの思春期を乗り切り、一人前の大人へと成長していくためには、本を読むことによって培われる力が必要だということ、力を培うには、どんな本でもいいのではなく、読むことによって「読む力」が育つような本に出会う必要がある」と書かれています。たくさんの本の中からそんな本を選び出し、読み聞かせたり、紹介したりして子どもたちに届けるのは、大人の役目ですが、なかでもその役目を果たさなければならないのが、たくさんの本が一番近くにいる図書館職員だと思います。子どもたちにほんとうに読んでほしい本、読み応えがあって、おもしろくて、読むことによって「読む力」が自然に培われていくような本をどんどん紹介していきたいと思わせてくれる1冊です。

2.『ミミズのふしぎ』(皆越 ようせい/写真・文 ポプラ社2004年)

 表紙を見るとまず気持ち悪さで誰もが引いてしまう本です。ミミズが口になにかくわえている写真がアップで表紙いっぱいに写っています。ミミズは身近にいるけれど口なんかみたことないですよね。第一印象はそれはそれは気持ち悪い本です。でも内容はとても興味深いものです。畑や公園でよく見かける土がもこもことなっていたのは、ミミズのウンチだったとか、ミミズにはいろんな色の種類があるとか、体の表面には硬い毛が生えているだとか、ミミズには雄も雌もなく、2匹がくっつくと両方のミミズに卵ができるなんて本当に不思議な生き物です。私は仕事で保育園、幼稚園、ボランティアで小学校・中学校で読み聞かせをしていますが、この本は保育園から中学校までどこで読み聞かせをしても子ども達を釘づけにした本です。本の最後に4億年前のミミズの化石の情報も載っていてもっとミミズ
のことが知りたくなります。皆さんもぜひ読んでみてください。大人だって釘づけになります
よ。

3.『夏の庭-The friends』(湯本香樹実/作 徳間書店2009年)

 最後に「死」への興味や恐怖から一人の老人を通して子供たちの成長につながった話しです。
 自分のおばあさんのお葬式から帰って来た友達から死んだ人の話を聞いた12歳の男の子たちが「死んだ人を見てみたい」と思い、近所に一人で暮らしている今にも死にそうなおじいさんを見張ることにしました。やがて、おじいさんに見つかってしまい、その時からおじいさんと3人の少年たちの交流が始まりました。
 おじいさんは今までの無気力な生活から一変し、3人の少年と生き生きとした生活を送るよ
うになりました。3人の少年はその中でおじいさんに戦争の体験など様々なことを学んだり、体験したりして楽しく過ごしました。
 しかしその時は突然にやってきました。少年たちはサッカーの合宿から帰ってお土産を持っておじいさんの家に向かったのですが、そこには冷たくなったおじいさんがいたのでした。あんなに死ぬのを待っていたはずなのに・・・。おじいさんと過ごした楽しかった日々が思い出され涙が溢れました。でもそこにはおじいさんの「死」を受け入れ、成長した少年たちがいました。
 「死」について語るときはどうしてもお話が暗くなりがちですが、この物語では少年たちの目線でユーモアあふれるストーリーが展開されて映画化、舞台化されたり、十数か国で翻訳、出版され、数々の賞も受賞したこともうなずけます。
 

      次回は磐田市立福田図書館 村松 千津子 さん です。
   
 

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