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図書館員の棚から3冊(第26回)


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図書館員の棚から3冊(第26回)

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 図書館員の本棚拝見!
 このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画をご紹介します。
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■第26回目は 三島市立図書館 佐野 裕美 さん です。

            図書館について考えた3冊


1.『知的生産の技術』 梅棹忠夫/  岩波書店

 奥付を見ると初版が1969年とあります。
 けれど、いまだに新聞・雑誌などの書評欄で取り上げられるし、Facebook上でも信奉者のコミュニティが出来ていたりします。巷に溢れる仕事術の源流はここだ、と断言できるでしょう。 
 働き始めて間もない頃この本を読み、日々の業務と照らし合わせて、自分の職業の選択は間違っていなかったと確信しました。その後『未来をつくる図書館』が出版され、この本のおかげで日本の図書館にも同じ思想が根付くだろうと喜んだものです。
 かつて学校の授業では、知識は教えてくれるけれど、知識の獲得の仕方は教えてくれませんでした。著名な学者でもあった著者は後進の指導には、メモのとり方・カードの利用法・原稿の書き方など基本的技術の訓練が必要だと気付きます。そこで、この本で創造的な知的生産を行なうための実践的技術についての提案を試みたのです。
 もし関心を持っていただけたのなら、著者の理想を具現化した「みんぱく」(国立民族学博物館)を訪ねてみるのもいいでしょう。博物館や私たちの働く図書館は、立派な「メディア」であることを再認識できます。

 
2.『はちうえはぼくにまかせて』
ジーン・ジオン/さく、マーガレット・ブロイ・グレアム/え、もりひさし/やく)ペンギン社

 課題解決型とかビジネス支援などという言葉を聞くと、必ずこの絵本を思い出します。
 アメリカでは、小学生でも「起業」すると聞いたことがあります。起業といっても、ベビーシッターであったり、道端でお手製のレモネードを売ることだったり、現在の自分の能力と環境で可能な範囲の事だそうですが、そうすることによって仕事の基本を学ぶのだそうです。
 この絵本の主人公トミーは、夏休みだというのにお父さんの仕事の都合でどこにも出かけられず、そのかわりに何か好きなことをしてもいいと言われます。トミーが選んだのは、家を留守にする人たちの鉢植えを預かるビジネスでした。ただ預かり水をやるだけでなく、肥料をやり、剪定し、預かった当初よりも植物を元気にした上、新芽を増やしてシェアするという付加価値をつける奮闘ぶり。さすが起業家の国、アメリカ。
 トミーが仕事に行き詰った時、打開策や新しい知識を求めかけこむ場所が図書館なのです。これもまたアメリカらしいなと感じました。
 とはいえ、子ども向け絵本なので、トミーを取り巻く家族の様子などもほのぼのと描かれ、色彩もきれいで読み聞かせにも向いています。
 働くという文字は、人が動くと表記します。子どもの自主的な行動の動線上にある図書館でありたい、といつも願っています。


3.雑誌「ダ・ヴィンチ」(月刊) メディアファクトリー

 個人的な話ですが、カミュもサルトルも柴田翔も、10代の頃に夢中になったミュージシャン(誰の事かわかった方とは語り合ってみたいものです)が推薦していなかったら手に取ることはありませんでした。
 ダ・ヴィンチは、若い利用者に本を勧める時にいつも念頭におく雑誌です。
 若者にとって、自分の心の中に寄り添う(と錯覚させてくれる)芸能人は大切な存在です。それを足掛かりに本を勧めるというのは、実践しやすい手法だと思います。けれど一方で考えてもみます。利用者は『芸能人おすすめの本』を手に取り完読するまで、自分の心の中だけで会話を成立させています。その一連の行動のなかで司書のできることは何でしょうか。正解がないことはわかっていますが、常に自問自答していようと思います。

 
         次回は 三島市立図書館 立井 孝昌  さんです。
   
 

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