本文へジャンプ
静岡県立中央図書館 
読み上げソフト用ページひらがなのページForeign languageサイトマップ
文字を小さくする標準に戻す文字を大きくする
文字の大きさ
簡単検索

ヘルプ
ホームご利用案内お知らせ交通案内

現在位置:HOMEの中のメールマガジンから図書館員の棚から3冊(第23回)

図書館員の棚から3冊(第23回)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※  
 図書館員の本棚拝見!
 このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画をご紹介します。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

■第23回目は 静岡市立清水中央図書館 山中 瑠美 さん です。

1.『ニーベルンゲンの指環』
  リヒャルト・ワーグナー/著  寺山修司・高橋康也・高橋廸/訳
  アーサー・ラッカム/絵  新書館 1983年
 「昔読んでとても気に入ったのだけど、何という本だったかうろ覚えで…。」そんな利用者の方のお手伝いをすることがよくあります。私にもそんな本がありました。それが『ニーベルンゲンの指環』新書館版です。図書館に配属されてから調べ、実物を手にできた時の懐かしさ。とても嬉しく思いました。高校の学校図書館にあり、挿絵の美しさに惹かれ何回も借りた本です。今確認してみると「新書館の海外名作絵本シリーズ」とありますから、絵も楽しませるための本だと分かります。挿絵は「不思議の国のアリス」や「マザーグース」なども手がけたアーサー・ラッカムで、幻想的な緻密な絵で、よく『指環』世界に合っています。
 内容はドイツの作曲家ワーグナーのライフワークといえるオペラ4部作を、寺山修司他の魅力的な訳で小説のように読めるようにしたものです。もともとはドイツの伝説が北欧に渡り発展していったもので、ドイツ中世英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」と北欧の「エッダ」「サガ」を合わせて、ワーグナーが完成させた上演するのに4夜もかかる長いオペラです。ラインの乙女が護っている川底に眠る黄金で指環をつくると全てが手に入るという言い伝えがあり、それを巡る神々・人間・小人族・巨人族の争いが描かれています。神々の王ヴォータンの人間臭さ、不老のリンゴの実を栽培する美の女神フライア、戦乙女ブリュンヒルデの美しさ、竜の血を浴びた人間ジークフリートの雄々しさ、嫉妬と陰謀がうずまく王宮のやりとり、そして神々の終焉へ一気に向かうクライマックス…。ファンタジー好きにもおすすめできる作品です。
 

2.『退出ゲーム』他 <ハルチカ>シリーズ
  初野晴/著  角川書店  2008年
 清水中央図書館に勤務して4年目、港に近いこの土地を気に入っています。そこで2作品目は静岡市清水区出身の作家、初野晴さんのミステリを紹介したいと思います。
 『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』『空想オルガン』『千年ジュリエット』と既刊4作が出ている<ハルチカ>シリーズは、吹奏楽の甲子園である普門館を目指す高校生たちを主人公にした推理物です。清水区を舞台にしており、主人公穂村チカが歩く商店街のアーケードは清水銀座かなとか、幼馴染の上条ハルタが本を借りてくる街の図書館は、やっぱり清水中央図書館かななど地元民には嬉しい作品です。県中部大会が行われる市民文化会館の横に駿府城がそびえたっているフィクションが見抜けるのは市民と城好きのご愛嬌です。ラジオからは「FMはごろも」が流れ、実在のようで実在じゃないそんな世界観があります。そして高校生活を彩る明るいユーモアが全編を通してあります。部活に燃えている日常が熱いです。作中で吹奏楽部は部員9名で出発するのですが、私も高校時代に弱小文化部にいましたので、部員勧誘に奔走する気持ちはよく分かります。現実では普門館は残念ながら耐震調査の結果、改修工事を断念することが2013年に決定し、吹奏楽の殿堂の歴史は幕を閉じましたが、舞台を変えても頂点を目指す気持ちを忘れないでもらいたいです。
 そして重要なのはシリーズがミステリであること。連作短編集からなり、一つの話に一つのミステリという形式です。残忍な事件はなく日常の謎を解く話ですが、雑学が楽しく、安心して読める軽快な青春ミステリです。

 
3.『ジェイン・オースティンの読書会』
  カレン・ジョイ・ファウラー/著  矢倉尚子/訳  白水社  2006年
 ジェイン・オースティン(17751817)はイギリスの女流作家で、死後200年近くが経ちますが、イギリスやアメリカを始めとする英語圏では根強い人気があります。3作品目に紹介するのは、そんなオースティンの代表作6作品を批評し合う6人の男女の群像劇である『ジェイン・オースティンの読書会』です。
 オースティンの代表作品は出版順に「分別と多感」「高慢と偏見」「マンスフィールドパーク」「エマ」「ノーサンガーアベイ」「説得」です。イギリスの中産階級の平凡な3・4家族を巡る話を得意とする作家ですが、分別あるエリナー、情熱的なマリアン、女王然としたエマ…と個性を持つキャラクターも多く、お気に入りの登場人物を持つ読者も少なくないようです。日本でいうと時代は違いますが「源氏物語」で最愛の人紫の上、奔放な朧月夜、慎み深い朝顔の君などで好みの派が分かれているのと似ているでしょうか。      
 好きな登場人物やシチュエーションについて複数で語り合うのは楽しいものです。『~読書会』はオースティンを読んだことがない人にも、1回だけ読んだことがある人にも、毎年読み返す人にも面白く書かれています。読書会が行われているのは現代アメリカで、オースティンの時代とは女性を取り巻く状況も国も違うのに、賛同も批判も交えて様々な意見が出ます。そうして1か月に1回読書会を開く男女たちの身にも段々変化が起こるという設定になっています。
 私はこの本を読む前に「分別と多感」「高慢と偏見」のみ読んでいたのですが、他の4作品も読みたくなり読了しました。小説という形をとって現代の群像劇を描きながら、読書の道標ともなっているユニークな作品です。

 
     次回は伊豆市立修善寺図書館 山田 麻耶  さんです。
    
      ※8月第1週のメルマガはお休みします。次回の配信は8月22日です。


   
 

図書館員の棚から3冊へ戻る     

   静岡県立中央図書館
   
   所在地 : 〒422-8002 静岡市駿河区谷田53-1
   電話 : 054-262-1242(代表)
    FAX : 054-264-4268
     
     
著作権・リンク等について

お問い合わせ
携帯サイト
http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/m/
QRコード
Copyright (c) Shizuoka Prefectural Central Library All Rights Reserved.