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図書館員の棚から3冊(第20回)


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図書館員の棚から3冊(第20回)

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 図書館員の本棚拝見!
 このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画をご紹介します。
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■第20回目は 静岡市立西奈図書館 飯田 幸 さん です。


1.「星の王子様」
    (サン=テグジュペリ/著 内藤濯/訳 岩波書店 1953年刊行)

 世界中で愛されているサン=テグジュペリの不朽の名作です。
 物語は一人の飛行士がサハラ砂漠に不時着し、そこで不思議な王子さまに出会い、「羊の絵」がきっかけで友情を結ぶところから始まります。
 ふるさとの星を離れ、旅に出た王子さまは、様々な星を巡り、最後に地球にたどりつきます。そこで仲良くなった飛行士に大切なことを語っていきます。王子様は星巡りの旅で様々な人に出会います。権力欲の王、自惚れ屋、飲ん兵衛、実業家、点灯夫、地理学者、そして7番目の星、地球では「絆を結ぶことの大切さ」を教えてくれたキツネに会います。
 「心でみなくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。」
 これは物語の中盤でキツネが星の王子さまに言ったセリフです。初めて読んだ   
 小学生の時には難しすぎて挫折しましたが、高校生になり再度手にとってこの物語の奥深さに驚きました。読む人のその時の心もありようで解釈が変わってくるのもこの本の魅力です。
 日本では岩波書店が長らく作品の翻訳権を有していましたが、2005年1月に翻訳出版権が消失したため2005年6月以降新訳本が多く出版されるようになりました。いつ、誰の翻訳で読むかでまたきっと感じ方も変わることでしょう。好みの訳者本を探すことも面白いと思います。

 
2.「赤毛のアン」 
 (ルーシー・モード・モンゴメリ/著 村岡花子/訳 新潮文庫 2008年刊行)


 赤毛のアンは現在放映されているNHKの朝の連続テレビ小説「花子とアン」の主人公、村岡花子によって日本で紹介されました。
 グリン・ゲイブルスに暮らす年老いた兄妹マシューとマリラは、働き手となる男の子をと希望して、孤児を引き取ることを決めます。しかし、2人のもとへやって来たのは11歳のアン・シャーリー。アンは赤毛にそばかす、やせっぽっちなロマンチックと空想が大好きな少女でした。手違いから、グリン・ゲイブルスの老兄妹に引き取られたアンが美しいプリンス・エドワード島の自然の中で成長してゆく物語です。赤毛のアンシリーズは全11巻刊行され、アンが少女から美しい女性へ、そして母へと成長していく姿が描かれています。
 星の王子様と同じく、赤毛のアンも様々な方の翻訳で出版されています。翻訳者の違いで物語の捉え方も少しずつ変わって見えます。翻訳者に注目して本を探すのも外国文学の面白さだと思います。 


3.「乙嫁語り」 (森薫/著 エンターブレイン 2009年刊行)

 2014年のマンガ大賞を受賞した作品で、19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺の地域を舞台に、「乙嫁」をキーワードに、自然の中に生きる人々の生活と文化を描いた漫画です。
 華麗な婚礼衣装を身にまとった20歳の花嫁が、12歳の花婿に嫁いでくる場面からはじまり、嫁入り道具として持参した弓矢で花嫁が馬に乗り狩りを行なう場面、もてなしのために料理を用意する場面、結婚祝いとして送られた豪華な布で部屋を模様替えする場面、親が子へ代々伝わる刺繍を教える場面など、生活に密着した光景が淡々と描かれています。タイトルの「乙嫁」というのは、古語で「若いお嫁さん」「美しいお嫁さん」という意味で、第1巻では20歳の花嫁のアミルが主人公のように見えますが、続く巻ではまた違った花嫁たちが登場し、婚礼を中心に文化の違いや当時の生活が丁寧に描かれているのが興味深い作品です。
 ストーリーではなく、絵で読ませる漫画。そう言いたくなるほどに細かく描きこまれた刺繍や細工の施された建物、そして美味しそうな食べ物の描写に、実際はどうなんだろうと思わずカスピ海周辺のガイドブックを手に旅行に行きたくなる1冊です。

    
     次回は静岡市立中央図書館美和分館 渡邉 友美 さんです。

   
 

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