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図書館員の棚から3冊(第5回)


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図書館員の棚から3冊(第5回)

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 図書館員の本棚拝見!
 このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画をご紹介します。
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■第5回目は 菊川市立小笠図書館 鈴木 優子 さん です。

  『パンやのくまさん』
(フィービとセルビ・ウォージントン/さく・え 福音館書店 1987年)
 
 最初はうちの子用にと思って手に取ったのですが、初版1987年のロングセラーはご多分に洩れず、大人が読んでも楽しく味わい深いものでした。
 ドラマチックな展開は一切なく、朝起きて店を開け、お客様の応対をして、仕事を終え、ご飯を食べてベッドに入る、ごくシンプルな内容です。
 まさきるりこさんが訳した日本語文からは、くまさんがいつもていねいにお客様に接している様子が伺えます。 また、パン生地づくりの「どさっ どさっ どさっ」などの擬音がときおりまじるのがリズムよく、声に出して読むと楽しいです。
 原題は「TEDDY BEAR BAKER」、描かれるくまさんの姿はまさにぬいぐるみのテディベアです。表情からは喜怒哀楽が読みとれないのですが、その分、読み手の気分によっていろいろに受け取ることができます。一方、背景に陰影がつき、小物類がひとつひとつ描かれることで、くまさんが現実の世界で実際に働いているように感じられます。冒頭、くまさんが、かまどの火にあたりながら朝一番のお茶を飲むシーンでは、椅子に長い影ができていて、まだ暗いうちから起きだして働いているのが想像でき、早起きが苦手な私はそれだけでぐっときてしまいます。
 寝る前に読み聞かせしながら、誠実に仕事に取り組み、地道に暮らすくまさんから「明日もまた1日がんばろう」と元気をもらっています。


『北の無人駅から』(渡辺 一史/著 北海道新聞社 2011)


線路両脇にはトンネル、ホームの北は山、南は海を見下ろす絶壁が迫る「駅の秘境」。合併により名前が消えた町にかつて存在した、1日1往復しか列車の停まらない駅。なぜこんなところに駅が-?

舞台となるのはすべて北海道。「無人駅」をきっかけに、そこに暮らす人々の生き方、歴史、土地が抱える問題点などを700ページを超える分量で描き出した大作です。タイトルだけ見ると鉄道ファン向けのようでもあり、中を見ると7つの章に細かい注釈つき。夜明けとも黄昏とも見える暗めの表紙写真。いかにもとっつきにくそうな本です。

しかし、いったんページをめくると、「事実は小説より奇なり」を地で行くような知られざる歴史や魅力的な人々、北海道のある一地方のことを取材しているにも関わらず、いつしか日本の地方がどこでも共通して抱える課題に繋がっていく内容に、途中で手が止められなくなりました。

 北海道と言えば水曜どうでしょうや旭山動物園くらいしか浮かばなかった貧困な発想の私でしたが、この本で見方が大きく変わりました。著者はあとがきでこの本について「この8年、私は寝ても覚めてもこの本を完成することだけを考え続けていた。この本一冊のために、一度もさわやかな朝食を口にしなかった」と書かれていますがそれも納得の充実感です。

 
『茶柱倶楽部』 (青木 幸子/著 芳文社コミックス 現在4巻まで刊行中)

 この夏、日本茶を冷茶で飲むことにはまり、小さなガラス製のポットを持ち歩いています。ビンの底で茶葉がゆらめき、透き通るグリーンの中に茶柱が浮かぶ様はちょっとした癒しになりました。10月も半ばを過ぎたこの頃も未だ活躍中です。日本茶を氷水で淹れる方法を知ったきっかけがこの漫画です。
 老舗茶問屋の跡取り娘の「鈴」が、幻の茶を探しつつ、日本茶の魅力を広めるため、トラックを改造した特製の移動茶店で日本全国をまわり、果ては海外までフットワーク軽く飛び出して行きます。行く先々でお茶を通した人々とのふれあいのエピソードとともに、各地のご当地茶や普段とは違うお茶の飲み方が紹介されます。
 日本茶を題材に扱っていることから、鈴の出身地が県中部だったり、静岡県産のお茶が何回も取材されていたりして身近に感じます。菊川のこともいつか取り上げてもらえたらいいなあと思いながら読んでいます。
 残念ながら現在市立図書館には置いていないのですが、家の本棚からとのことで紹介させていただきました。


      次回は 菊川市立図書館菊川文庫 村岡 泰行 さん です。

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