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リレーエッセー(第197回)


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リレーエッセー(第197回)

「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。

■第197回目は  静岡県立中央図書館 眞子 みな さんです。

  「読書会のすすめ」

 児童書が好きで大人になった今でも読み続けています。けれども好んで読むのは文学ばかり。ノンフィクションや哲学、伝記の本は、ずっと避けてきました。

 ところがある日、伝記『アンデルセン』(ゴッデン著 偕成社)を読んでみると、そのおもしろさにびっくり! 「伝記はつまらない」のではなくて、自分がおもしろい伝記に出会っていなかったことに気付いたのです。それから、子どもと本に関わる仕事をしていたり、とにかく児童書が好きだったりする友人たちと読書会「伝記を読む会」を結成、まずはおもしろいものを読みたいという思いから、主に子ども向けに出版された伝記で、定評のあるものを読み始めました。

 この読書会をしていて気付いたことは、「おもしろい伝記の被伝者は、自分の身近にいたら大変そう」です。(もちろん、中には共感し、応援したくなるような被伝者もいないことはないのですが。)例えば、アンデルセンはとても心が弱いですし、考古学者のシュリーマン(『夢を掘りあてた人』ヴィーゼ著 岩波書店)は自分の欲望のままに動きます。モーツァルト(『伝記 モーツァルト』ハーマン著 偕成社)は自信家過ぎる上に自分自身の管理ができないことにも呆れてしまいます。一方、被伝者を支える周りの人々はとても魅力的に見えます。被伝者達の才能を認め、その才能が花開くよう助言をし、ある時は金銭面のサポートまでしてくれるのです…! 

とは言え、こんな風に思わせる被伝者達も、この魅力的な支援者達が支援したいと思えるような特別な才能や人柄の持ち主だったのでしょう、う~んすごい! と、毎回読書会はこんなまとめになります。

 このように、被伝者がもし身近にいたら…と思わず考えてしまうくらい人物が魅力的に描かれていること、被伝者達の生きた時代がよくわかること、そして何より、被伝者(そして彼らを支えた周りの人々)の成し遂げたことに感動できること、これらが揃う伝記はおもしろい、というのが2年間読書会をしてきた私たちの見解です。

 読まず嫌いだった伝記は、今では私のとても興味のある分野になりました。もし、「興味はあるけどハードルが高い」とお思いの分野があるときは、まずは定評のある本を読んでみることをおすすめします。そして運良く、同じような境遇の方が見つかったら、読書会を開いてみるのはどうでしょうか。一人で読むと途中で投げ出したくなる本も、読書会が予定されていれば不思議と頑張って読み進められますし、それぞれが本を読んで感じたこと、おもしろかった、難しかったなどと感想を述べ合うと、様々な角度からその本を読むことができるのです。その先にはきっと、今まで知らなかったおもしろい世界があるはずです。


       次回は 富士市立中央図書館 奥村 紗香 さんです。 

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