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リレーエッセー(第141回)

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リレーエッセー(第141回)

「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。

■第141回目は 浜松市立三ヶ日図書館長 高野 一幸さん です。

 走ることについて私の語ること

 「プチッ」と音がして、右足付け根の水泡が破れた。30kmを過ぎて、残り10kmちょっと。今回は走り込みも順調だったのに、長距離走もこなして万全だったはずなのに……。後悔しても始まらない。山間部の細やかなアップダウンも終わり、幸い残りは比較的平坦な海岸沿いの道だ。とにかく、当初の目標4時間を切るためには、粘り強くこのペースを守っていくしかない。八重山の風は心地よく、西表島、竹富島の島影が見守ってくれている。どこかで私の名前を呼ぶ声がする。ゼッケンを見て地元の方が応援してくれているのだ。1kmごとの距離表示と腕時計のにらめっこが続く。やっとの思いでゴールのアーチが目に飛び込んできた。「ゼッケン327番、岡県から参加の……」名前をアナウンスされる声にラストスパートをかけ私の42.295kmは終わった。
 黒糖をかじり、さんぴん茶を一気に飲み干す。交流会場では八重山の踊りが続いていた。「『よし、今回はうまく走れた』という感覚を取り戻せるまで、僕はこれからもめげることなく、せっせとフル・マラソンを走り続けるだろう……」村上春樹 著「走ることについて語るときに僕の語ること」の一文がふと浮かんできた。第9回石垣島マラソン、記録3時間5739秒。私自身の「NEXT」に向かって今日も走り続けている。

 次回は 島田市立島田図書館長 大石 保巳さん です。

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