パンくずリスト:このページは ホーム »の下の デジタルライブラリー »の下の しずおかの貴重書常設展示 »の下の 2019年11・12月の貴重書展示 「幕末の先端技術」 です

2019年11・12月の貴重書展示 「幕末の先端技術」

『高縄鉄道之図』画像

幕末の先端技術 蒸気機関

幕末期、イギリスが中国を武力で圧倒したアヘン戦争は、日本にとってかなり衝撃的な事件でした。特に、イギリスの蒸気船は日本にとっても脅威で、幕府や諸藩は、黒船来航の10年以上前から蒸気機関の研究を行ってきました。旧幕府の蔵書からなる当館の葵文庫に蒸気機関についての洋書があるのは、当時の幕府の研究の様子を表しています。

このような研究の成果もあり、黒船来航の2年後には、初の国産蒸気船「雲行丸」が完成し、明治51872)年には、新橋-横浜間に初めて鉄道が開業しました。さらに、その17年後には東海道線が全通するなど、日本の鉄道網は驚異的な発展を遂げます。

歴史学者のトインビーは「人類の歴史の奇跡の一つは、日本の明治以降の近代化である」と述べましたが、近代化の背景には、幕末期の蒸気機関の研究や鉄道網の急速な拡大があったと言えそうです。

今回の展示では、当館で所蔵する蒸気機関関係資料を展示します。

展示期間・場所

期間 11月1日(金)~12月27日(金)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室 貴重書展示コーナー
(期間中、資料を入れ替えて展示します)

展示資料一覧

画像をクリックすると、当館デジタルライブラリーの該当資料が表示されます。

書名等 画像 略説

AN220(本編)
AN221(附図)
『Volledige verhandeling over de stoomwerktuigen』
(『蒸気機関精説』)

※11月1日~11月28日展示

『蒸気機関精説』画像

薩摩藩が建造した初の国産蒸気船「雲行丸」の基本参考資料となった『水蒸船説略』の原本と思われるのがヘルダムの著作です。

本書はそのヘルダム著『Gronden der toegepaste werktuigkunt』(『実用機械学の基礎』)の第4巻を独立させたものです。

AN39
『Eerste grondbeginselen der natuurkunde』(『理学原始』)

※11月30日~12月27日展示

『理学原始』画像

西洋の科学技術を詳細に記した資料です。蒸気機関は断面図まで載っています。

蘭学者の川本幸民はヨーロッパの利器を紹介し、門人たちは『遠西奇器述』としてまとめましたが、その種本が本書でした。

AE182
『A manual of the
steam engine and other prime movers』(『蒸気機関及びその他の原動機』)

※11月30日~12月27日展示

『蒸気機関およびその他の原動機』画像

著者のランキンは蒸気機関技術の功労者で、「エネルギー」という言葉は彼の用法によるものです。

本著で唱えている蒸気タービンの理論サイクルはランキンサイクルと呼ばれ、今日でも蒸気機関の基礎をなしています。

K915/108
『高縄鉄道之図』

※11月1日~11月17日展示

『高縄鉄道之図』画像

明治5年に新橋~横浜間の鉄道が開通しました。この作品は開業前に描かれたもので、絵師が想像によって描いたと思われます。

高縄(品川)で鉄道は海にある堤防の上を走っていますが、これは兵部省が土地の引渡しを拒否し、海上敷設がとられたためです。

K915/108
『東京八ツ山下海岸蒸気車鉄道之図』

※11月19日~11月28日展示

『東京八ツ山下海軍蒸気車鉄道之図』画像

八ツ山下とは高輪八ツ山(現在の品川駅あたり)のことです。

この作品も明治5年の開業の前年に絵師が想像で描いたもので、レールのないところをおもちゃのようなかわいい蒸気機関車が走っています。当時、新しい題材であった鉄道は、多くの浮世絵師によって描かれました。

K915/108
『写真名所一覧高なは蒸気車往返之図』

※11月30日~12月15日展示

『写真名所一覧高なは蒸気車往返之図』画像

当時、高輪(品川)付近では線路用の土地が確保できず、海上の埋め立て地に線路を敷設した区間がありました。錦絵でも、海上の築堤を走る鉄道の様子がうかがえます。

この絵は歌川国政(四代)による鉄道錦絵です。国政(四代)は役者絵を得意としましたが、文明開化の様子を描いた錦絵も数多く残しています。

K915/108
『東京各大区之内新ばしステイーション』

※11月30日~12月15日展示

『東京各大区之内新ばしステイーション』画像

旧新橋駅を描いた錦絵です。明治5年9月、日本最初の鉄道路線の起点として新橋駅は開業しました。木造石張り2階建ての西洋建築の駅舎は、長らく東京のターミナル駅として機能していましたが、大正3年、東京駅ができると旅客営業が廃止され、汐留駅と名を変え貨物駅となりました。

近年、旧新橋駅の跡地は発掘調査が行われ、現在は駅舎が復元されています。

K915/108
『従東京上野至武州熊ヶ谷蒸気車往復繁栄之図』

※12月17日~12月27日展示

『従東京上野至武州熊ヶ谷蒸気車往復繁栄之図』画像

上野~熊谷間を往復する蒸気機関車の様子を描いたもので、この路線は、明治16年7月に熊谷まで開通し、明治17年5月に高崎まで延長され、現在の高崎線となりました。

右手前方に見える三河島(東京都荒川区)の切り通しは、工事が難しかった上に出来栄えが見事であったため、当時大変有名になった場所だそうです。

貴重書展示一覧に戻る