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2019年3・4月の貴重書展示「葵文庫コレクション1 語学資料編」

『獨逸單語篇』画像

葵文庫コレクション1 語学資料編

『葵文庫』とは当館の特殊コレクションのひとつで、江戸幕府が収集した書物3,586冊からなります。その中でも西洋の書物は2,325冊と3分の2以上を占めますが、それは19世紀以降、幕府は欧米列強に対抗するため、西洋の技術や知識を積極的に入手する必要があったからです。

当時、日本にはオランダ語の堪能な蘭学者は多くいましたが、当時の先進国であるイギリス・フランス・ロシアの言語が分かるものはほとんどいませんでした。そこで、仏蘭辞典や英蘭辞典などオランダ語との対訳辞書を積極的に入手し、それらを底本に日本語との対訳辞書を編さんし、洋書の翻訳を行いました。そのような理由から、葵文庫所蔵の洋書には、辞書類も多く含まれています。

近代における日本の急成長の裏には、このような辞書の収集や編さんがあったことを忘れてはいけません。

展示期間・場所

期間 Ⅰ期:3月14日(木)~3月28日(木)
   Ⅱ期:3月30日(土)~4月14日(日)
   Ⅲ期:4月16日(火)~4月25日(木)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室 貴重書展示コーナー

展示資料一覧

画像をクリックすると、当館デジタルライブラリーの該当資料もしくは拡大画像が表示されます。

書名等 画像 略説
第Ⅰ期:3月14日(木)~3月28日(木)
AN91
【葵文庫】
『English and Dutch dictionary, Nederduitsch
en Engelsch woorden boek』(和訳:英蘭・蘭英辞典)
AN91画像

ホルトロップ著の英蘭・蘭英辞典です。福澤諭吉が本書を基に英語を学んだことで有名です。

当館では本資料(再版本)のほか、これ以前に出版されたもの(AN92)も所蔵しています。

K070/2
『ハルマ和解』
ハルマ和解表紙ハルマ和解ページ

ハルマの『蘭仏辞典』を原本とし、そのオランダ語による説明部分を日本語に訳した日本初の蘭仏辞典です。

『江戸ハルマ』とも呼ばれ大槻玄沢の門人・稲村三伯らが約13年を費やし、寛政8(1796)年に草稿が完成しました。

AN173
【葵文庫】
『A new pocket dictionary of the English and Dutch languages』(和訳:新ポケット英蘭辞典)
『新ポケット英蘭辞典』画像

ピカード編の本書は、日本最初の英和辞典『英和対訳袖珍辞書』の底本として使われました。

開国以降、オランダ語の知識を生かして英語を学習したり、英和辞典を編纂したりするために、英蘭・蘭英辞典が使わました。

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K012/58
『英和対訳袖珍辞書』
英和対訳袖珍辞書

堀達之助らが中心となり、上の本のオランダ語の部分に日本語をあてはめたものです。

英語はオランダから来た鉛活字で、日本語訳は木版によって印刷され、約33,000語を収録した我が国最初の洋装活字本です。

第Ⅱ期:3月30日(土)~4月14日(日)
AN77
【葵文庫】
『Mijne lotgevallen in mijne gevangenschap bij de Japanners』
『日本幽囚実記』原作画像

国後島で捕えられたゴロウニンが、2年3ヶ月、幽閉生活を送った間、日本について見聞きしたことを記録した手記です。

本書はオランダ語訳版で、ゴロウニン達の釈放に尽力した高田屋嘉兵衛の肖像が掲載されています。

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Q215-26
【久能文庫】
『遭厄日本記事』
『遭厄日本記事』画像

ドイツ語に訳されたゴロウニンの手記(『日本幽囚記』)をオランダ語に訳したものから、さらに翻訳したものです。

本書には、ディアナ号副艦長でゴロウニン救出に努めたリコルトが書いた付録2巻と「モウル獄中上書」1巻がセットになっています。

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AG19
【葵文庫】
『Kanban doitsutangohen』(和訳:官版独逸単語扁)
『獨逸單語篇』画像

日本最初のドイツ語辞書で、木版刷り25丁の和綴じ本です。

22のジャンルに分けられて、1,879語(重複あり)の単語等が収録されています。当館所蔵本には、4ページまでの92語に訳語が朱書されています。

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AG16
【葵文庫】
『Die Ersten Lectionen des deutschen Sprachunterrichts』(和訳:ドイツ語講座初級)
AG16画像

大学南校(旧開成所・開成学校)で作成された、初めてドイツ語を学ぶ人向けに作られたテキストです。

上記『官版独逸単語扁』に続く初期のドイツ語教本であり、アルファベット・書体等について記載しています。

AG18
【葵文庫】
『Deutsches Lese-und Uebungsbuch』(和訳:ドイツ語読本及び演習)
AG18画像

大学南校で作成されたテキストの1巻と3巻で、ドイツ語とローマ字読み日本語等が混在している読み物です。こちらも同校のドイツ語教本として使用されたと思われます。

第Ⅲ期:4月16日(火)~4月25日(木)
AJ8
【葵文庫】
『厚生新編』
『厚生新編』画像

ショメールが編纂した家庭百科事典のオランダ語訳版を翻訳したものです。翻訳は幕府の事業として、蛮書和解御用で行われました。

本書が初出の外来語・翻訳語も多くあると言われています。

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AF206
【葵文庫】
『Futsugomeiyo』(和訳:仏語明要)
『仏語明要』画像

日本で初めてフランス語を修めた学者と言われる村上英俊が編集した日本最初の本格的仏和辞典です。

左綴じ、横書きの和綴じ本で、アルファベット順に35,127の語彙を配列し、その横に縦書き2段で日本語訳を記しています。

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AF221
【葵文庫】
『Nouvel alphabet,facile et amusant』(和訳:簡単で面白い新しいアルファベット)
AF221画像

フランス語で書かれた、幼児向けアルファベットのテキストと思われる資料です。

当館では駿府学校の印記入り資料を10冊所蔵しており、当時、学問所で使われていた様子が伺えます。

葵文庫等で所蔵する辞書の系譜については、「葵文庫に見る辞書辞典の系譜/蘭学から英・仏・独学へ」もご参照ください。