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2013年10月の貴重書展示

文明開化の象徴 蒸気車鉄道

『高縄鉄道之図』画像

幕末期、イギリスが中国を武力で圧倒したアヘン戦争は、日本にとってかなり衝撃的な事件でした。特に、イギリスの蒸気船は日本にとっても脅威で、幕府や諸藩は、黒船来航の10年以上前から蒸気機関の研究を行ってきました。旧幕府の蔵書からなる当館の葵文庫に蒸気機関についての洋書があるのは、当時の幕府の研究の様子を表しています。

このような研究の成果もあり、黒船来航の2年後には、初の国産蒸気船「雲行丸」が完成し、明治5(1872)年には、新橋-横浜間に初めて鉄道が開業しました。さらに、その17年後には東海道線が全通するなど、日本の鉄道網は驚異的な発展を遂げます。

歴史学者のトインビーは「人類の歴史の奇跡の一つは、日本の明治以降の近代化である」と述べましたが、近代化の背景には、幕末期の蒸気機関の研究や鉄道網の急速な拡大があったと言えそうです。

今回の展示では、当館で所蔵する蒸気車関係の資料を展示します。

展示期間・場所

期間 10月1日(火)~30日(水)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室 貴重書展示コーナー

展示資料一覧

画像をクリックすると、当館デジタルライブラリーの該当資料または拡大画像が表示されます。

書名等 画像 略説
AN39
『Eerste
grondbeginselen
der
natuurkunde』

(和訳:自然科学基礎第一歩)
『Eerste grondbeginselen der natuurkunde』画像  西洋の科学技術を詳細に記した資料です。蒸気機関は断面図まで載っています。
 蘭学者の川本幸民はヨーロッパの利器を紹介し、門人たちは『遠西奇器述』としてまとめましたが、その種本が本書でした。
AN221
『Volledige
verhandeling
over de stoomwerktuigen』
(和訳:蒸気機関論完全論説)
『Volledige verhandeling over de stoomwerktuigen』画像  薩摩藩が建造した初の国産蒸気船「雲行丸」の基本参考資料となった『水蒸船説略』の原本と思われるのがヘルダムの著作です。
 本書は同じくヘルダム著の『Gronden der toegepaste werktuigkunt』(『実用機械学の基礎』)の第4巻を独立させたものです。
AE182
『A manual of the
steam engine
and other prime
movers』
(和訳:蒸気機関及びその他の主な発動機類提要)
『A manual of the steam engine and other prime movers』画像  著者のランキンは蒸気機関技術の功労者で、「エネルギー」という言葉は彼の用法によるものです。
 本著で唱えている蒸気タービンの理論サイクルはランキンサイクルと呼ばれ、今日でも蒸気機関の基礎をなしています。
K915-108-039-003
『高縄鉄道之図』
『高縄鉄道之図』画像  明治5年に高輪-品川間の鉄道が開通しました。この作品は開業前に描かれたもので、絵師が想像によって描いたと思われます。
 高輪鉄道は海にある堤防の上を走っていますが、これは兵部省が土地の引渡しを拒否し、海上敷設がとられたためです。
K915-108-022-057
『東京八ツ山下海岸蒸気車鉄道之図』
『東京八ツ山下海岸蒸気車鉄道之図』画像  八ツ山下とは高輪八ツ山(現在の品川駅あたり)のことです。
 この作品も開業前に描かれたものです。

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