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2023年(令和5)年12月・2023(令和6)年1月のWeb版貴重書展示 「中村正直と静岡」

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中村正直(1832~1891)は、明治初期を代表する啓蒙思想家・教育者ですが、静岡学問所で教授を務め、同教授時代に『西国立志編』などのベストセラーを著した、静岡にゆかりの深い人物でもあります。
江戸麻布に生まれた正直は、昌平坂学問所で学び、同学問所教授方を経て、幕府の儒官となりました。儒学者でありながら洋学も好んだため、幕府の遣英留学生の監督役として渡英し、西洋文化を体感しました。しかし、渡英中に幕府が倒れたことにより帰国し、明治元(1868)年、徳川家に従って静岡に移住してきました。
静岡では、静岡学問所の教授として若者を育成しながら、渡英で体験した西洋の先進的な考えを紹介すべく、『西国立志編』『自由之理』を翻訳・刊行しました。特に『西国立志編』は新時代の生き方に迷う民衆に歓迎され、ベストセラーとなりました。
明治5(1872)年の学問所の閉鎖に伴い東京に戻り、教育職に携わったほか、明六社に参加して『明六雑誌』を発行するなど、明治時代の教育文化界に大きな影響を与えました。

展示期間・場所

期間 12月1日(金曜日)~1月16日(火曜日)
場所 静岡県立中央図書館 閲覧室に入ってすぐの貴重書展示コーナー

展示資料一覧

画像をクリックすると、当館デジタルライブラリーの該当資料もしくは拡大画像が表示されます。

書名等 画像 略説

159/107
『西国立志編』
(明治3(1870)年刊)

西国立志編

「天ハ自ラ助クルモノヲ助ク」の言葉で有名な本書は、中村正直(号は敬宇)が幕末ロンドンに1年半滞在し帰国する際、友人フリーランドから贈られたスマイルズ著の『Self Help』(日本語訳で『自助論』ともいう)を訳したものです。明治維新後、中村は静岡学問所の教授として、大変革期に生き方を模索している青年たちに接し、翻訳を決意しました。この本の初版は、静岡藩の援助を得て静岡で出版され、明治期を通じ、福沢諭吉著の『学問のすすめ』と共に国民的教科書の役割を担いました。
本書は11冊(13編)が完本ですが、当館では刷りと装丁が異なる3種類を所蔵しており、それぞれ欠本があります。

国立国会図書館デジタルコレクションで全文を読むことができます。(西国立志編 第1冊 外部サイトリンク)

133.4/ミル ほか
『自由之理』
(明治5(1872)年刊)

自由之理 03-200.jpg

この本はミル著『自由論』(John Stuart Mill"On Liberty"1859) の邦訳で、『西国立志編』と共に中村正直の代表的な翻訳書です。巻頭には静岡学問所のアメリカ人教師クラーク(Edward Warren Clark:1849~1907) による英文の序があります。
自由民権運動の指導者であった河野広中がこの書を馬上で読み、「人の自由、人の権利を重んずべきを知り、胸中深く自由民権の信条を描いた」と回想しているように、自由民権運動に大きな影響を与えました。
『自由之理』の第2章は、思想と言論の自由を主張した本書の最も重要な章です。中村はそこで、自分の意見を曲げて仕方なく世間の意見に従うことを「心中ノ奴隷(メンタルスレーブ) 」と訳出しました。

国立国会図書館デジタルコレクションで全文を読むことができます。(自由之理 第1冊 外部サイトリンク)

K347/525
『中村正直伝』
(貴重書ではありません)

(資料紹介のみ・画像はありません)

『中村正直伝』は少年雑誌や児童文学の編集者・執筆者であった石井研堂(けんどう)(民司(たみじ))によって書かれた少年向けの伝記です。石井研堂の著書の中でもこの作品は格調の高い評伝文学の傑作と言われています。

国立国会図書館デジタルコレクションで全文を読むことができます。(中村正直伝 外部サイトリンク)

S222/35
Life and Adventure in Japan
(貴重書ではありません)

(資料紹介のみ・画像はありません) 『Life and Adventure in Japan』は、アメリカの教育者エドワード・ウォーレン・クラークが静岡学問所で教員として活動した経験を帰国後にまとめたものです。飯田宏によって邦訳され『日本滞在記』として出版されています。

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