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名著・貴重書/洋書と明治初期の翻訳書
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(1)法律書 9

AO19-1〜2
“Corpus Iuris Civilis ” Amsterdam, 1663,1664.
(『ローマ法大全』 1663、1664年 アムステルダム)2冊
印記:開成所、静岡学校 

タイトルぺ−ジ
 
第1巻表紙裏の貼紙
タイトルぺ−ジ
第1巻表紙裏の貼紙

 『ローマ法大全』は、東ローマ皇帝ユースティニアーヌス(Iustinianus)(在位527- 565)が紀元6世紀前半に編纂させた法典で、『ユースティニアーヌス法典』ともいわれ、ラテン語で書かれたものである。
 ユースティニアーヌス帝の死後、『ローマ法大全』の存在も忘れ去られてしまった。しかし、11世紀にイタリアのボローニアの法律学校を通して次第に知られるようになり、その後ローマ法は17世紀にドイツで全面的に受け継がれた。我が国の民法にもローマ法思想は大きな影響を与えている。
 ところで、“Corpus Iuris Civilis ”(『ローマ法大全』)の名称による出版は1583年である。当館所蔵本は2巻本で、刊行は1663年と1664年、印刷・出版業者はオランダのアムステルダムのブラエウとエルゼヴィエル及びライデンのハッキウスである。エルゼヴィエル家は、16〜18世紀のオランダの有名な印刷・出版業者で、本書は極めて小さな活字でびっしりと印刷されている。
 この本の出版にあたって、1662年に神聖ローマ皇帝レオポルド1世 (Leopold I)(在位1658-1705)の出した特許状(Summa Privilegii) が掲載されている。これには次のように書かれている。
 「帝国領内において、『ローマ法大全』の初版本が刊行された日から最低10年間は、何人たりとも序文を書いたり、註解を加えることを許さない」。
 第2巻の銅版刷標題紙[図1]には、右手に天秤を持った正義の女神ユースティティアが描かれている。女神に向かって右側に立て掛けてある斧と鞭(むち)の束は、ローマ時代の権力の標識ファスケースである。中央の円内の人物には、IVSTINIANIと記されている。

[図1]第2巻の銅版画
[図1]第2巻の銅版画

 なお、江戸幕府旧蔵の当館本にはラテン語の書き込みのあることから、幕府の所蔵となる前はヨーロッパ諸国のだれかの蔵書であったと推測される。また「丙寅」(ひのえとら)の書き込みのあることから、本書が開成所に入ったのは慶応2年(1866年)と思われる。ヨーロッパ諸国の法形成に大きな役割を演じた『ローマ法大全』を江戸幕府が所蔵していたことは、大変興味深い。

<参考文献>
    海老原一彦「江戸幕府旧蔵書“Corpus Iuris Civilis”(「『ローマ法大全』)の由来と概要」(SZ01-3『葵(静岡県立中央図書館報)』29号 1995年3 月)

 
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