葵文庫の概要/4洋書の部/(2) 洋書調所の旧蔵書

(2)　洋書調所の旧蔵書

　洋書調所の存続期間が一年二ヶ月（文久２年５月～３年８月）ということもあり、「洋書調所」印のある書籍は、洋書調所刊行「官板独逸単語篇」～かんぱんドイツたんごへん～（江戸、文久２年）などを含めても非常に少ない。

（ア）

（イ）

AG15
6.3×3.0cm (朱)
「洋書調所」印

AG15
「ドイツ語, ドイツ文学学習入門」
(「洋調」の黒印）

(ア)

(イ）

AF18
6.0×3.5cm (朱)
「神奈川会所改」印

AF18
「新仏蘭・蘭仏辞典」の貼紙

　「洋書調所」印は「蕃書調所」印と字体が似ているが、「洋書調所」印の方が文字がやや細く、逆に周囲の枠はやや太い。またこのほかに、「洋調」という小形の黒印もある。(AG15の場合）

　洋書調所の旧蔵書の中では、「洋書調所」印とともに「神奈川会所改」（かながわかいしょあらため）という朱印の押されているものが多い。（イ)＜AF18＞は、表紙裏の貼り紙から文久戌（いぬ）、つまり壬戌～みずのえいぬ～（２年）11月に受け入れたものであることが分かるが、次頁に「神奈川会所改」印が押されている。

　この「神奈川会所改」印は、「長崎東衙官許」印と同じく、開国による輸入書の増加に対処するための検閲印である。

＜参考文献＞

朝倉治彦・石山洋「蕃書調所旧蔵蘭書箚記」