(5)[明治初期の啓蒙書]2
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中村正直(なかむら まさなお)2
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133.4-111
英国彌爾(イギリス・ミル)著
駿河静岡 中村敬太郎訳『自由之理』
明治壬申二月(明治5年)(1872年)発兌 駿河静岡 木平謙一郎版 全5巻6冊
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タイトルページ
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この本はミル『自由論』(John Stuart Mill“On Liberty”1859) の邦訳で、『西国立志編』と双璧をなすものである。巻頭には静岡学問所のクラーク(Edward Warren Clark)(1849-1907) の英文の序がある。
河野広中がこの書を馬上で読み、「人の自由、人の権利を重んずべきを知り、胸中深く自由民権の信条を描いた」と回想しているように、自由民権運動に大きな影響を与えた。ミルは、「権力からの自由」と同時に「社会の多数派の横暴からの自由」を説いた。
『自由之理』の第2章は、思想と言論の自由を主張した本書の最も重要な章である。中村はそこで、自分の意見をまげてしかたなく世間の意見に従うことを「心中ノ奴隷(メンタルスレーブ) 」と訳出した。
中村のこのような個性に関する情熱的な擁護論は、明治初期の知識人に対して強烈な訴えとなったのである。
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<参考文献>
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下山重一「明治初期におけるミルの受容」(Z10-3『思想』1973年12月 NO.594)
p.57-59.
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