図書館員の棚から3冊(第128回)(2019/02/22)

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図書館員の棚から3冊(第128回)(2019/02/22)


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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第128回目は 清水町立図書館 杉村 克彦 さん です。

 
1 『警視庁生きものがかり』 
  (福原 秀一郎/著 講談社 2017年


 この本の著者、福原秀一郎氏が所属する警視庁生活安全部生活環境課環境第三係は、同じく講談社から出ていてテレビドラマにもなった大倉崇裕さんの小説「警視庁総務部動植物管理係」「警視庁いきもの係」のシリーズのモデルになったとも言われています。
 実際の捜査の現場はドラマや小説のように派手ではなく、大変な苦労があることは、容易に想像がつくところですが、この本を読むと、法律で商取引を禁じられている希少生物たちが、ドラマや小説以上に闇ルートで密輸入され売買されていることに驚かされます。
 また、動物園からレッサーパンダや希少なサルが盗まれた事件、闇業者や悪徳ペットショップからそれらの希少動物を購入し、隠れて飼育している動物マニアなど、常識では考えられないような事件の話が満載で、ドラマや小説以上に興味をそそられました。
 そして何よりも、本の全体を通じて感じられたのは、著者の法を守る正義の心と、人や生き物に対する優しさでした。
 昨今、テレビの番組などでも「外来生物」のことが、度々、話題になっています。私たちが暮らす環境の中にも、多くの特定外来生物が入り込んできています。日本の固有種、在来生物を守り、生態系を維持していくことも大切ですが、その陰で、福原氏たちのように大変な努力をされている方々がいることを考えさせられます。                                                        

2 『ため池の外来生物がわかる本 池の水をぬいた!』 
  (加藤 英明/文 越井 隆/イラストレーション 徳間書店 2018 年


 テレビ番組の「池の水ぜんぶ抜く大作戦」や「ザ!鉄腕!DASH!!」「クレイジージャーニー」などに出演されている静岡大学教育学部講師、加藤英明先生が書いた児童書です。
 池の水を抜く「かいぼり」を行うと、どういったことが分かるのか、外来生物が増えると、地域の生態系や私たちの生活にどういった影響を及ぼすのか、子どもでも分かり易く、丁寧に書かれています。
 テレビ番組を見ていると、どうしてもカミツキガメやアリゲーターガーのような見た目にも恐ろしい大型の生物に目を奪われがちですが、アメリカザリガニやカダヤシ、タイリクバラタナゴなどの小型の生物についても、どうして日本に来たのか、どんな被害があるかなど、詳しく解説しています。
 また、池と稲作の関係や日本全国のため池の分布、トラクターやブルドーザーのない昔の人はどうやって池を作ったのかなど、生物学だけに止まらず社会科の勉強にも役立つ内容になっており、本を読む人を飽きさせません。
 加藤先生がフィールドワークを行っている静岡市城北公園の池や麻機遊水地での話は、特に詳しく書かれており、私たちの地元静岡県ということもあって、大人にもなかなか興味深い内容です。ぜひ、お子さんと一緒に読んで欲しい1冊です。 

3 『しっぽがない! コアラとヒトのしっぽのなぞ たくさんのふしぎ傑作集』 
  (犬塚 則久/文   大島 裕子/絵 福音館書店 2018年


 子どもと動物が好きな図書館員がお薦めする3冊目の本は、やっぱり動物のことが書かれた児童書(絵本)です。
 動物のしっぽの働きについて詳しく解説している本ですが、動物の学校の授業で、イヌの先生が「骨のある動物(脊椎動物)の特徴」という授業を行ったところ、生徒であるコアラとヒトが「私にはしっぽがありません。どうしてですか?」と質問したことから始まる物語仕立てになっています。ですから、理科(生物学)が苦手なお子さんでも、すんなりとお話の中に入っていけると思います。
 この本では、いろいろな動物のいろいろなしっぽの形と、それぞれのしっぽが果たす仕事(役割)を、非常に細かく解説しています。日頃、あまり気に留めていなかったこと、敢えて知ろうとも思わなかったことですが、改めて並べてみると「それぞれの動物のしっぽには、こんなにも沢山の役割があったのか。」と、大人でも驚かされること必至です。
 犬塚則久さんの分かり易い文章と、大島裕子さんの優しいタッチの絵で、親御さんが読んであげれば、小さなお子さんにも喜んでいただけるでしょう。


 次回は 吉田町立図書館 内山 知奈 さん 水野 華奈 さん 関 ひなの さんです。

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