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■第112回目は牧之原市立図書館 小磯 栄美さん 松浦 彩さん 池ヶ谷 則子さん です。■ |
1 『としょかんのよる』 (ローレンツ・パウリ/文 カトリーン・シェーラー/絵 若松 宣子/訳 ほるぷ出版 2013年) この書名と、キツネが楽しそうにたくさんの本を抱えている表紙にひかれてこの絵本を手にとりました。 ネズミを追いかけて、初めて図書館にきたキツネ。文字が読めないキツネは、図書館や本がどんなものか知りません。でも、ネズミが読んでくれた絵本はおもしろそうだったので、毎晩図書館に通うようになります。 キツネは、図書館員のようなネズミの言う事を聞いているのか、いないのか?わかりませんが、本を読んでもらったことにより、本をおもしろいと感じ、本の内容に影響され、疑問に思ったことを調べて、関連する本も読んでいきます。もう、本に夢中になっているってことです。「本ってすごいんだよ。」ってことがちゃんと伝わってきます。 まだ、図書館に行ったことがない子どもたちや大人の人たちに読んでもらいたいなと思いました。 (小磯 栄美) 2 『運命の恋をかなえるスタンダール』 (水野 敬也/著 文響社 2017年) 「恋愛経験ゼロ・三十路の文学女子が出会ったのは、『恋愛論』を書いた文豪・スタンダールだった―。」帯に書かれたこの文章に興味をひかれて手に取った一冊です。 図書館に勤める主人公の聡子は、幼いころに起きたある事件がきっかけで、人目につかないように生きてきました。人との会話も苦手、目立ちたくない、関わりたくない。分厚い眼鏡と長い髪で顔を隠し、服装も地味なものばかり。美容院に行くのも苦手で、髪も自分でカットしてしまいます。 しかし、ある日自宅で開いた『恋愛論』のページから、文豪・スタンダールが飛び出してきたことにより、聡子の生活は変わっていきます。日本語ペラペラの自称スタンダールは、聡子を激励し、叱りつけ、時に褒めながら、諦めがちな聡子を変えていこうとするのです。 『恋愛論』の引用や、仏文学の作品名も出てきますが、何も知らなくても十分に楽しめます。特にスタンダールのキャラクターが秀逸で、怪しげなフランス語を交えての会話はくすりと笑ってしまうほど。聡子とスタンダールのコミカルなかけあいは、コメディさながらの面白さですが、スタンダールはある秘密を抱えていて…。読み終わった時に、前向きな気持ちになれる本です。ぜひ読んでみてください。 (松浦 彩) 3 『東京バンドワゴン』 (小路幸也/著 集英社 2006年) 東京の下町で代々続く古書店「東京バンドワゴン」で繰り広げられる物語。個性豊かな人々と、犬とネコと、それから・・ゆーれいも!?一つ屋根の下で暮らすのですから、絶対に何かが起きる。誰かが手を突っ込んだ問題事を、家族みんなで解決しちゃう。 昔見た、ハチャメチャなホームドラマをなんとなく頭の中で重ね合わせ、「平成の今じゃちょっと無いんじゃない?」と思いつつも物語に入り込んでしまう。泣いて笑って夜が明けて、こんな生活もちょっと楽しいかも、と思いながら読み続け、気が付けば10年以上も続いている大ヒット小説です。 涙あり、笑いあり、そして今は希薄になりつつある下町情緒あふれるあたたかい物語です。古書店って、馴染みがないので、入るのをためらってしまいますが、こんなお店があれば入ってみたいな、と思わせてくれる一冊です。 お店に一歩足を踏み入れてみませんか。ちょっとほっこりしたい時におすすめです。 (池ヶ谷 則子) |
次回は 御前崎市立図書館 服部 祐三子 さん です。 |