図書館員の棚から3冊(第103回)(2018/02/09)

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図書館員の棚から3冊(第103回)(2018/02/09)


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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第103回目は 藤枝市立岡出山図書館の 小山 亜紗 さん です。■

 
1 『ご本、出しときますね? 文筆系トークバラエティ』 
    (BSジャパン/編 若林正恭/編 ポプラ社 2017年)

 BSジャパンで放送されていた、文筆トークバラエティ『ご本、出しときますね?』を書籍化したものです。

 オードリー若林正恭さんと作家の方々のトーク番組ということで、若林さんの大ファン、読書が大好き、更にプロデューサーがテレビ東京の佐久間宣行さん…とあっては、私にとってこれ以上ないくらい幸せな番組でした。

 テレビ番組だと言葉が文字として残らないので残念に思っていたところ、昨年4月に書籍化されたため早速購入しました。

 登場するのは、角田光代さん、西加奈子さん、平野啓一郎さん、中村文則さん、窪美澄さん、朝井リョウさん・・・などなど、錚々たる顔ぶれ。

 これだけはする、これだけはしないと自分に課している“マイルール”から様々なトークが展開される中、作家さんのぶっとんだ一面、もとい魅力的な個性が、若林さんの持ち前のトーク力によって引き出されていきます。

 自分の大好きな作家さんはもちろんですが、今まで作品を手に取ったことのなかった作家さんの回も大変楽しく、食わず嫌いをせずに読んでみようという気にさせられました。

 また、各回最後にその日登場した作家さんのオススメ本が紹介されます。肩の力を抜きたい人に、自意識をなんとかしたい人に、猜疑心に苛まれる人に、他人に寛大になりたい人に、変態の気持ちがわかるかもしれない…などなど、毎回異なるテーマでオススメの1冊が紹介されますので、読書の幅も広がります。

 普段小説をあまりお読みにならない方にもおすすめしたい本です。作品からでなく、“人”から入ってみるのも面白いのではないでしょうか。


2 『芸能界No.1トイレマニア佐藤満春のトイレ学』
    (佐藤満春/著 第三文明社 2016) 

 芸能界一のトイレマニア 、アメトーークのトイレの紙様芸人でもおなじみ(?)、どきどきキャンプ 佐藤満春さん(以下サトミツさん)の初のトイレ本です。

 主な内容は、「 子育てとトイレ〜便育のすすめ〜」「 トイレと日常の密接な関係」「 ピカピカトイレは一日にしてならず」「 明日話したくなるトイレの雑学」ですが、そのほかにも、便育をテーマにした創作絵本『勇気あるうんち 』、正しいトイレ掃除方法 、ショールーム&トイレ工場のルポ、対談3つ、サトミツさんおすすめのトイレ スポットなどが掲載されています。

 対談の相手とテーマもバラエティに富んでおり、鈴木奈々さんとの対談では、学校でうんちをするとからかわれるという悪しき伝統に真っ向からメスを入れています。また、オードリー春日俊彰さんとの対談では、春日さんが体を張るロケで世界の国や部族のトイレを数多く目撃してきたことを生かし、海外のトイレ事情から、2020年東京五輪でのトイレ対策・展望に至るまでを語っています。

 そのほか、掃除に関することや、節水・節電に関することなど、知っていると役に立つ情報が簡潔にまとめられていて、とても勉強になります。といっても難しい内容ではなく、カラーページが多く、また、写真やイラストもふんだんに使われているので、大人も子供も楽しめると思います!

 余談ですが、男性が立って小用を足すと、目線の高さまではねているので、壁や床はもちろん、服にもついているということになります。最近は自宅のトイレで座って小用を足す男性も増えてきているようですが、“そこはどうしても譲れない!”という方は、この本で正しいトイレ掃除方法をマスターし、ご自身で掃除してみてはいかがでしょうか? ご家族に喜ばれるかもしれません。



3 『母からの解放 娘たちの声は届くか』
    (信田さよ子/著 ホーム社 2016年)

    
 信田さんの著書を読むようになったのは、母親について悩んでいた時に知人から勧めていただいたのがきっかけです。

 “毒親”という言葉がここ数年で少しずつ浸透し、ドラマでも取り上げられ、母娘関係に悩む人は少なくないと思えてきたものの、まだまだ他者からの共感は得にくいのが現実です。

 自分が持っているものだけで“毒親”をテーマに展示ができそうなほど多くの関連書籍を読んできましたが、信田さんの著書が最も明快で、尚且つ私の心の叫びを見事に表現してくれていました。

 毒親の存在が浮かび上がってきた背景や、毒親が世間に(つまり娘以外に)認知されにくい理由、母親は変わることができるのか否か、そして、距離をとる具体的な方法などが、モデルケースを挙げながら書かれています。豊富なカウンセリング事例を持つ信田さんならではの言葉が、説得力を持って訴えかけてきます。

 私自身、10代の頃からずっと母の“依存や甘えと紙一重の支配”に苦しみ、なんとか彼女を変えたいと思ってきましたが、残念ながらそれはほとんど不可能だということを改めて思い知らされました。正面からぶつかる以外に何も策を講じられぬまま20代を過ごし、30代も半ばを過ぎようとしている今、ここへ来てようやく“理解されることを断念する”道しかないことを認めることができたのです。

 読むことで救われるような生ぬるい気休め本ではないので、非常に重い事実を突きつけられます。しかし、その衝撃が、自分の人生を生きるために考え方を変えていく第一歩になりました。

 母娘関係に疑問や違和感をお持ちの方は、手に取ってみる価値はあると思います。信田さんの著書『母が重くてたまらない』『さよなら、お母さん』『夫婦の関係を見て子は育つ』などとあわせてお読みになるのをお勧めします。



 次回は 三島市立図書館の 佐野 裕美 さん です。

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