図書館員の棚から3冊(第102回)(2018/01/26)

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図書館員の棚から3冊(第102回)(2018/01/26)


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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第102回目は 伊豆市立中伊豆図書館の 伊郷 美恵 さん、伊豆市立天城図書館の 月出 真理子 さん、伊豆市立土肥図書館の 藤井 郁代 さん です。■

 
1 『みしのたくかにと』 
    (松岡 享子/作 大社 玲子/絵 こぐま社 1998年)


 お料理が好きなふとっちょのおばさんが、台所の戸棚のすみから見つけた一粒の小さな黒い種。朝顔かもしれないし、スイカかもしれないけど、どっちにしても楽しみだと庭にまいてみた。大きくなってくると、それは、かぼちゃだった。

 天気のいい日には馬車で散歩にでるこの国の王子さまが、おばさんの畑の看板を見てさかさに読んだ文字は「みしのたくかにと」。王子さまは、勉強も健康も今より劣らないようにと家来たちに言われ続け、だんだん窮屈に思うようになっていった。そこで思い出した「みしのたくかにと」の看板。王子さまを心配してお城に出向いたおばさんが、王子さまを元気にするために思いついた方法とは…?

 20年ほど前にこの本に出会ったとき、まず書名を見て、聞きなれない言葉を不思議に思い、開いてみました。娘の通う小学校へも何度か持って行き、読みました。

 王子さまも、王子さま以外の子どもたちも、子どもは子ども。元気に育ってほしいと願う親心が伝わる、読んでホッとする1冊です。

                          伊豆市立中伊豆図書館  伊郷 美恵



2 『チェロの木』
    (いせ ひでこ/[作] 偕成社 2013年) 

 森の木を育てる祖父にいざなわれ、森の息遣いを感じながら育った少年。両親はその森の木で楽器を作っていた。その楽器で奏でられるチェロ奏者の演奏を聴いた少年は、そこからから紡ぎ出される音に、楽器となった木が経験してきたすべてを感じ取り、深くその胸に木の魂を抱きかかえた。音楽が、木と、楽器をつくる人、演奏をする人、そしてそれを聴く人を、時間を超えて結びつけ、廻っていく。「星が廻るように」。

 いせひでこさんの透き通った繊細な絵が、ページをめくるごとに胸に深く浸み込みます。中学生の読み聞かせのための本を探していて、偶然手に取ったこの一冊にくぎづけになりました。自然の大きな命に触れるとともに、親から子に引き継がれる大切なもの、命のつながりの温かさを感じられる一冊です。ぜひ読んでみてください。

                          伊豆市立天城図書館  月出 真理子



3 『まいごになったぞう』(ちいさいえほん2)
    (てらむら てるお/ぶん むらかみ つとむ/[え] 偕成社 1975年)
    

 迷子になってしまった赤ちゃんぞうが、いろいろな動物と触れ合いながらお母さんぞうの所へ戻ってくる、とても楽しいお話です。登場する動物は、小さいお子さんが大好きな、ぞう・きりん・かば・わに・らいおん、村上先生の細部までリアルな絵と、ペールトーンのやさしい色づかいがとても可愛く、寺村先生の描くすこしの恐れも疑いもない、純粋な赤ちゃんぞうの心が「あばば、うぶー。」の繰り返しの言葉にあらわれていて、読んでいてとても温かく心地良いです。

 この本を初めて手にしたのは30年位前、私が子育て真最中の頃です。図書館で何回も借りて読み、親子で暗記してしまうほど読みました。「あばば、うぶー。」は子供たちの担当でした。昨年の夏、孫を抱っこしてこの本を読み、プレゼントすることができました。

 図書館にある背表紙の文字が薄くなってきた「まいごになったぞう」ですが、私には、子育ての時間を思い出させてくれる大切な絵本の中の一冊です。

                           伊豆市立土肥図書館  藤井 郁代



 次回は 藤枝市立岡出山図書館の 小山 亜紗 さん です。

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