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■第95回目は 長泉町民図書館の 倉持 樹 さん、庄田 理恵 さん、杉山 絢菜 さん です。■1 『夜の写本師』 (乾石 智子/著 東京創元社 2011年) 右手に月石。左手に黒曜石。口のなかに真珠。 主人公カリュドウは3つの品を持って生まれ、本に囲まれて育ちます。 成長とともに写本の道へ進むカリュドウですが、子どもの頃に起きた事件に心をむしばまれたまま、復讐に力を注ぎます。 大いなる敵、大魔法使いアンジスト。カリュドウの復讐計画はどのように進展していくのでしょうか。 (倉持 樹) 2 『嫁をやめる日』 (垣谷 美雨/著 中央公論新社 2017年) 主人公は44歳の主婦、夏葉子。ある晩、夫が脳溢血で急死したと連絡が入る。 夫は東京に出張に行くと言っていたが、なぜか地元、長崎のビジネスホテルで亡くなる。結婚して、15年、子どもはいない。夫は出張や仕事で帰りが遅く家庭を顧みず、夫婦仲は冷め切っていた。 夫の不可解な行動を調べ始めた夏葉子だが、同時に婚家の姑や親戚から監視されたり、老後の世話を期待されるようになり、束縛感を感じ始める。 自分はこのまま婚家に縛られて生きていくのか。押し潰されそうな気持の中、夏葉子の出した結論は、姻族関係終了届。婚姻届や離婚届のように紙一枚を役所に届ければ、婚家との関係が解消できる制度だ。 実家の父の助けもあり、夏葉子は嫁家との縁を切る事を申し出る。 重たいテーマだが、テンポよく読めて、また、最後のひとこまでは、夏葉子が姑と街中で偶然会い、無視することなく姑の手助けをするという心温まる展開となっている。 重圧から解放され新たな自分の人生を歩み始めた夏葉子を応援したい1冊。 (庄田 理恵) 3 『肉小説集』 (坂木司/著 KADOKAWA 2014年) インパクトのあるタイトルや表紙からもわかるように、この本のメインとなっているのは「豚肉」です。元サラリーマンと豚足、憧れの家庭を妄想する中学生と豚の角煮、偏食小学生と生ハムなど、お肉や料理を通してちょっとだけ前に進む人々を描いた短編集になっています。 食べ物が中心となる小説では、思わずお腹が空いてしまうような美味しそうな描写がメインでもあり、売りの部分でもあります。しかしこの小説では、「口の中に、ゴムのような塊がずっとある」「ねちねちと冷たい皮」「ぺらぺらの肉は火を通し過ぎてかたい」と、美味しそうとは思えない表現も多く出てきます。そんな描写からは、美味しいものばかりではなく冷たく消化不良なものも多くある、人生の様々な面も感じ取れると思います。 短編集になっているので、心温まる話やちょっとブラックな話、ユーモアあふれる話など様々な料理を味わうことが出来ます。 (杉山 絢菜) 次回は 浜松市立中央図書館の 吉田 佐織 さん です。 |