図書館員の棚から3冊(第86回)(2017/05/26)

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図書館員の棚から3冊(第86回)(2017/05/26)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第86回目は 静岡県立中央図書館 前田 雅人 さん です。■


 我が家にはサッカー少年がいたため、いくつかのサッカー漫画があります。その中から私の好きな1冊を紹介します。

1 『DAYS』
    (安田 剛士/著 講談社 2013年〜)

 「聖蹟高校」に入学したサッカー経験のない「柄本つくし」が、サッカーの天才「風間陣」との出会いをきっかけに、同校の名門サッカー部に入部。つくしがサッカー選手として成長していく姿と、同校サッカー部の活躍について描かれたスポ根漫画です。

 とにかく、つくしの努力が半端ないです。テクニックはないし、華奢な体格だけど、人一倍練習して、試合ではひたむきにピッチを走り続け、ボールを拾ったり、チャンスを作ったりします。そんなつくしの姿がチームの士気を鼓舞します。名門サッカー部の多くの部員の中で1年生のつくしが試合に出ることができるようになるのもわかるような気がします。

 また、同校サッカー部のチームメイトをはじめ、ライバル校の選手まで、登場人物すべてが魅力的です。サッカーっていいな、一生懸命やることって素晴らしいなと思える爽やかな作品です。

 次に、歴史・時代小説から2冊紹介します。

2 『村上海賊の娘』(上・下)
     (和田 竜/著 新潮社 2013年) 

 大阪本願寺を巡る、毛利対織田の第一次木津川口の戦いの史実に基づくストーリー。毛利水軍方の瀬戸内海の海賊衆、「村上海賊」の当主の娘「景」が、海と陸を舞台に、心の赴くがままに行動して強敵と戦っていく爽快な歴史小説です。

 所々に史実についての詳細な解説があったり、登場人物の名前の読み方が難しくて何度もフリガナの付いた最初の登場シーンのページを探してみたり、土地勘がないからこれもまた何度も巻頭に付いている地図を見直したりするなど、読む苦労が絶えなかったです(歴史小説を読むときの「あるある」?)。登場する海賊や武士、鉄砲衆など、それぞれが生まれ育った環境から成る気質や風体、また、一進一退する迫力ある戦いが目に浮かぶように描かれていて、作品の中の世界に引き込まれていきました。

3 『とっぴんぱらりの風太郎』
     (万城目 学/著 文藝春秋 2013年)


 昨年度、「『読書県しずおか』ふじのくにブックレクチャー」でご講演いただいたのを機に、万城目学さんの小説を読み始めました。

 不運の末、浪人生活を送ることとなった伊賀忍者「風太郎」が、京の都や大阪夏の陣を舞台に、奇想天外な運命を辿っていく時代小説です。

 同郷の忍者「黒弓」、「常世」、「蝉」、「百」や「ひさご様」と呼ばれれる人物との友情、「ひょうたん」の中に閉じ込められている奇妙な妖精?との出会いなど、爽やかでファンタジーな「万城目ワールド」が展開される一方で、戦国の世の中の厳しさや切なさ、わずかな希望といったものが加わっており、読み切ったあとの後味が著者の他の作品とは一風違ったものとなっています(まだ、数作品しか読んでいませんが)。そこがこの作品の好きなところです。

 次回は 伊東市立図書館 冨士 一成 さん、宮内 美穂子 さん、松浦 友子 さん です。


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