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■第86回目は 静岡県立中央図書館 前田 雅人 さん です。■ |
(和田 竜/著 新潮社 2013年) 大阪本願寺を巡る、毛利対織田の第一次木津川口の戦いの史実に基づくストーリー。毛利水軍方の瀬戸内海の海賊衆、「村上海賊」の当主の娘「景」が、海と陸を舞台に、心の赴くがままに行動して強敵と戦っていく爽快な歴史小説です。 所々に史実についての詳細な解説があったり、登場人物の名前の読み方が難しくて何度もフリガナの付いた最初の登場シーンのページを探してみたり、土地勘がないからこれもまた何度も巻頭に付いている地図を見直したりするなど、読む苦労が絶えなかったです(歴史小説を読むときの「あるある」?)。登場する海賊や武士、鉄砲衆など、それぞれが生まれ育った環境から成る気質や風体、また、一進一退する迫力ある戦いが目に浮かぶように描かれていて、作品の中の世界に引き込まれていきました。 3 『とっぴんぱらりの風太郎』 (万城目 学/著 文藝春秋 2013年) 昨年度、「『読書県しずおか』ふじのくにブックレクチャー」でご講演いただいたのを機に、万城目学さんの小説を読み始めました。 不運の末、浪人生活を送ることとなった伊賀忍者「風太郎」が、京の都や大阪夏の陣を舞台に、奇想天外な運命を辿っていく時代小説です。 同郷の忍者「黒弓」、「常世」、「蝉」、「百」や「ひさご様」と呼ばれれる人物との友情、「ひょうたん」の中に閉じ込められている奇妙な妖精?との出会いなど、爽やかでファンタジーな「万城目ワールド」が展開される一方で、戦国の世の中の厳しさや切なさ、わずかな希望といったものが加わっており、読み切ったあとの後味が著者の他の作品とは一風違ったものとなっています(まだ、数作品しか読んでいませんが)。そこがこの作品の好きなところです。 次回は 伊東市立図書館 冨士 一成 さん、宮内 美穂子 さん、松浦 友子 さん です。 |