図書館員の棚から3冊(第127回)(2019/02/08)
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■第127回目は 松崎町立図書館 伊藤 乃江 さん 梅田 博子 さん です。■ |
1 『猫語の教科書』 (ポール・ギャリコ/著 灰島 かり/訳 ちくま文庫 筑摩書房 1998年) 猫が人間を支配する・・・?! ある日、記号やら文字やら数字が入り混じったものでつづられた暗号のようなものがとどけられた。はじめは理解不能に思われたが、解読していくうちにそれはなんと猫の手によってつづられた文章だった。 意味深なものから始まるこの本は、猫の生態や飼い方などとは全く違って猫の目を通して人間の本質を鋭くつつかれているようなもので、すでに猫と生活を共にしている人、これから猫を家族の一員に迎えたいと考えてる人、ただただ猫が大好きな人にはたまらない一冊だと思います。 猫と生活を共にしていれば必ず遭遇する場面が、猫の目線で各章に登場し「そうそう」「あるある」「そうだったのかぁ」など、きっと読みながらニヤニヤしてしまうでしょう。 本文の(獣医にかかるとき)の章では、人間の痛いところをつつかれ苦笑いするしかなく、(じょうずな話し方)では、この本の原題でもある「THE SILENT MIAOW・・・声を出さないニャーオ」は、猫のしたたかさに感心してしまいます。そして(愛について)の章では“人の孤独を…おなかによじ登ることによって…なぐさめてあげられる”この場面はとても心にひびきました。 猫の一つ一つのしぐさや鳴き方を使い分けるなど、感心しながら読み進めていくうちにもうすでに心が乗っ取られていることに気づくでしょう。人間が猫をしつけるのではなく、猫が人間をしつけていたなんて。 (伊藤 乃江) 2 『シスター・ヒロ子の看取りのレッスン』 (小出 美樹/著 KADOKAWA 2018年) 私事でありますが、一人暮らしの母が90歳になるのを機に、一昨年長年の東京生活を終え故郷に戻って参りました。 仕事と介護の生活・・・覚悟はしていたつもりですが、現実は思った以上に厳しいです。 なかなか読書もままならない中、選ぶ本は介護系ばかり。読んでも頭の中ではわかっているんだけどな・・・と思う本が多い中で、やさしそうなシスターの表紙についつい手が伸びてしまいました。(特にクリスチャンというわけではありませんが) ホスピスの話なので、介護とは若干違うのかも知れませんが、看る側、看られる側の気持ち、死というものの受け止め方などユーモアも交えながらの言葉がじんわり私の心に染み込んでくれました。 例えばわがままを言うのは生きている時間を楽しみたいという事、昔の話ばっかりしてるな~と思っても、それは神様の所に近づいている人はいろいろな時代を時間旅行している、話がかみ合わないときは心のメガネを換えれば本当の気持ちがわかる等々、宗教に関係なく心が軽くそしてやさしくなれる、なるほど!そう考えれば良いんだ!と納得のできる言葉ばかりです。 これからも続く両立生活。もちろん上手く手を抜くとか、気分転換をするとかもとても大切な事ですが、視点を変えることが今の私には一番必要なのだろうと気が付かせてくれた一冊でした。 そしてこの本、母にも勧めたいと思ってます。今年92歳になりますが、今でも読書が大好きです。 (梅田 博子) 次回は 清水町立図書館 杉村 克彦 さん です。 |