辞書・辞典の系譜/解説(参考)
葵文庫
 

AN-283
[「和蘭字彙」(おらんだじい) 安政2〜5年(1855〜1858)]
「ヅ−フハルマ」(長崎ハルマ)は刊行されず、写本の需要は大きかった。しかし写本には誤謬が多く、また高価でもあったので、佐久間象山が嘉永2年(1849)改訂増補版の出版を願い出たが許可されなかった。
その後、幕府の侍医法眼桂川甫周が再び改訂版の出版を申請したときには、ペリ−来航後で幕府も西洋事情を知る必要を痛感したため、許可された。甫周は数名のものとともに校正・改訂し、「和蘭字彙」という名称で木版にし、前編を安政2年(1855)、後編を同5年(1858)にそれぞれ刊行した。内容は「長崎ハルマ」とほぼ同じものである。
半丁30行、左側にオランダ語、右側に訳語(漢字カタカナ交じり文)が縦書きされ、オランダ語は筆記体、訳語は見やすい楷書でそれぞれ印刷されている。
本書は江戸時代における最高の対訳辞典であり、その後の英和辞典やその他外国語との対訳辞典は、本辞典に源流を発しているといってよい。

<参考文献>

    849-2 「江戸時代蘭語学の成立とその展開 III」
    849-12 「和蘭字彙」第1,5巻の解説(杉本つとむ)
    (早稲田大学出版部 複製本 )


表紙
 
本文の一部
表紙
本文の一部