江戸後期・明治初期の歴史/資料解説
葵文庫

 

K070-3
[「道富法児馬」(「ヅ−フハルマ」「長崎ハルマ」) 写本17冊]

 オランダ商館長ヘンドリック・ヅ−フ(Hendrik Doeff ,1777-1835)が長崎の通詞と協力して編集した蘭和辞典。ハルマの「蘭仏辞典」(第2版 1729)を原本としている。刊本ではなく写本33部が作られ、そのうち1部は幕府に献上され、2部は長崎奉行所と江戸天文方に分置された。
 文化13年(1816)には一応の完成を見たが、全体の完成はヅ−フ帰国後の天保4年(1833)。収容語彙は約4万5千の単語と5万余の短句・短文からなっている。
 「江戸ハルマ」が訳語に漢字を好み、主として単語の訳のみに対して、「長崎ハルマ」は口語を基本とし、例句・例文も取り入れている。
 大阪の緒方洪庵(おがたこうあん)の適塾では、一部しかない原本を順番に写したり、大名の注文に応じて書写した話が「福翁自伝」に見える。また、勝海舟も若いころ夜中に2部写し、うち1部を30両で売ったともいわれている。

<参考文献>

848-2 「江戸時代蘭語学の成立とその展開 III」
(当館本についての記述がある)

本文の一部
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